図書館からお借りしている本。
『みかづき』(森絵都著・集英社刊)です。
これを読むきっかけがなんだったかは忘れてしまったのですが、どうやら最初に登場する主人公、吾郎の人生と関係があるような。
こんなセリフが初めの方にあります。
「ぼくが高校生のとき、親父が商っていた問屋がつぶれてしまって、ぼくも働くことになってね。職業を選んでいる余裕はなかったんだ」
これ、わたしに通じるんですね。その境遇が。ネットか新聞の書評かでその情報を得て、すぐさま図書館に予約を入れたのかと思いますが忘れました。
彼は小学校の用務員をしている。そして用務員室で子どもに勉強を教え始める。子どもが集まってくる。そして…という話。
久しぶりに読む長編現代小説です。
彼の人生が三代にわたって描かれています。なかなか面白いです。
背景は教育界、それも戦後の塾の変遷が背景にあります。
わたしの子どもたちがお世話になっていた頃も詳しく描かれていて興味深いです。
そうか、塾というのはそんな世界だったのか!と今さらに思わせられます。
で、今日読んでいて不審だったところ。
最初の行。《もじもじしている美鈴に、台所から寛子の檄が飛んだ。》
この場面の「檄が飛ぶ」という言葉は誤用です。
塾が背景となっている小説で誤用があるとはちょっとびっくり。
著者の森絵都さん、まさかご存じなかったのでしょうか?
この一行はセリフとは違って作者の地の言葉です。
出版社の校正洩れでもあったわけで、珍しいですね。
【追記】