出久根達郎さんの『恋の石ころ』を読んでいて、遠い昔のことを思い出した。
「夏の爆弾」の項である。
このあとまだ次のページに続いて「夏の爆弾」の意味が解るのだが、この随筆の冒頭。
《子どもの頃、夏の夜、田んぼ道を歩いていると、草むらで光るのもがある。ホタルだ、と思い、捕まえようと手を伸ばしたら、あれは蛇の目だよ、と大人に教えられた。》
わたしも幼児のときにこれを体験したことがあると思い出したのだ。
母の実家は和田山の糸井という所だった。
そこから西宮に帰って来る時のこと。
わたしは多分5、6歳だったと思う。
朝、まだ暗いうちに和田山駅まで母親と歩かされた。
祖父と祖母が送ってくれた。
多分数キロあったと思うが、もっと近かったかもしれない。自家用車なんか無い時代である。
まだ暗い中、田んぼ道、山裾の道を歩いた。
その途次のこと、わたしは道の傍らの草むらで光るものを見つけた。
「あ、ホタル!」と言って捕まえようとした。
すると祖父が「それは蛇の目だ!」と叱った。
出久根さんも同じ体験をしておられたのだ。
出久根さん推薦の本。 『触媒のうた』楽しい文学史秘話が満載。