『別冊・コーヒーカップの耳』です。

これはわたしの手作り本。
参考のために今これを読んでいます。

著者は安部譲二さん、元㋳さん。自らの府中刑務所での服役体験を書いた本です。
『別冊・コーヒーカップの耳』はサブタイトルを「塀のうちそと」と付けました。
安部さんの本のタイトルは『塀の中の懲りない面々』。
よく似てますが、安部さんは直接の体験。
『別冊・コーヒーカップの耳』は、やはり元㋳さんの服役を含める体験ですが、わたしが聞き書きしたもの。
東と西で言葉遣いは全く違うのですが、隠語には共通なものがいくつもあって面白いです。
近いうちに『別冊・コーヒーカップの耳』はちゃんとした形にしたいと思っているのですが、このままでは出せません。門外不出です。
公表するには何篇かは外すことになります。それも含めて読めるのは今のうちです。

これはわたしの手作り本。
参考のために今これを読んでいます。

著者は安部譲二さん、元㋳さん。自らの府中刑務所での服役体験を書いた本です。
『別冊・コーヒーカップの耳』はサブタイトルを「塀のうちそと」と付けました。
安部さんの本のタイトルは『塀の中の懲りない面々』。
よく似てますが、安部さんは直接の体験。
『別冊・コーヒーカップの耳』は、やはり元㋳さんの服役を含める体験ですが、わたしが聞き書きしたもの。
東と西で言葉遣いは全く違うのですが、隠語には共通なものがいくつもあって面白いです。
近いうちに『別冊・コーヒーカップの耳』はちゃんとした形にしたいと思っているのですが、このままでは出せません。門外不出です。
公表するには何篇かは外すことになります。それも含めて読めるのは今のうちです。
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
「あとがき」(草稿)
「塀のうちそと」の語り部、K谷A久氏と知り合ったのは、わたしが主宰する将棋会に彼が入会してきたことによる。いわば棋友である。その後、私の店「喫茶・輪」の定連客となり、毎日のように顔を見せるようになった。
カウンターを挟んでの彼の話は、私にとって驚くことばかりであった。先ず、その言葉に驚く。その世界の専門用語というのだろうか、チャカ(拳銃)、ヒネ(警察)、アンポンタン(覚せい剤)、イモヒク(びびる)、ドウグ(拳銃などの武器)、シゴト(犯罪)、カチコミ(殴り込み)、ユビチギル(指詰める)等々。そしてその言葉の後ろには、わたしのうかがい知れない世界が、黒々と尾を引いているのである。それをユーモアたっぷりに語ってくれる。興味の湧かないわけがない。いつしか私は、彼が語る話のメモを取り始めていた。
スキンヘッドの上に体重は優に90キロを超える。堂々たる体躯である。そして両の手の小指が途中から無い。胸のシャツの間からは、時にチョロッとマンガ(刺青)が覗く。会社(組)を辞めてから何年も経つというが、ただならぬ気配を辺りに漂わせていた。
しかし彼は、頭の良い人である。だからこそ、その世界で一応の地位にいたのであろう。腕力だけではない、いわゆるインテリヤクザである。読書と将棋が趣味だというのだ。しかし事情があって足を洗う。カタギに戻ったのである。そして自らを「やくざの落ちこぼれ」という。だからこそ私が興味を持つのかもしれない。やくざの勇ましくカッコいい話など、私は大して興味がない。人間の陰の弱い部分にこそ、興味が湧く。それを彼はユーモアを交えて語ってくれていたのである。
~塀のうちそと~
「あとがき」(草稿)
「塀のうちそと」の語り部、K谷A久氏と知り合ったのは、わたしが主宰する将棋会に彼が入会してきたことによる。いわば棋友である。その後、私の店「喫茶・輪」の定連客となり、毎日のように顔を見せるようになった。
カウンターを挟んでの彼の話は、私にとって驚くことばかりであった。先ず、その言葉に驚く。その世界の専門用語というのだろうか、チャカ(拳銃)、ヒネ(警察)、アンポンタン(覚せい剤)、イモヒク(びびる)、ドウグ(拳銃などの武器)、シゴト(犯罪)、カチコミ(殴り込み)、ユビチギル(指詰める)等々。そしてその言葉の後ろには、わたしのうかがい知れない世界が、黒々と尾を引いているのである。それをユーモアたっぷりに語ってくれる。興味の湧かないわけがない。いつしか私は、彼が語る話のメモを取り始めていた。
スキンヘッドの上に体重は優に90キロを超える。堂々たる体躯である。そして両の手の小指が途中から無い。胸のシャツの間からは、時にチョロッとマンガ(刺青)が覗く。会社(組)を辞めてから何年も経つというが、ただならぬ気配を辺りに漂わせていた。
しかし彼は、頭の良い人である。だからこそ、その世界で一応の地位にいたのであろう。腕力だけではない、いわゆるインテリヤクザである。読書と将棋が趣味だというのだ。しかし事情があって足を洗う。カタギに戻ったのである。そして自らを「やくざの落ちこぼれ」という。だからこそ私が興味を持つのかもしれない。やくざの勇ましくカッコいい話など、私は大して興味がない。人間の陰の弱い部分にこそ、興味が湧く。それを彼はユーモアを交えて語ってくれていたのである。
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
44「天敵」
マスターの血液型 なんでっか?O型?
良かった。もしマスターがAやったらどないしょ思た。ここに書いてあるんやけど BとAは相性悪いんやて。天敵て書いてある。
~塀のうちそと~
44「天敵」
マスターの血液型 なんでっか?O型?
良かった。もしマスターがAやったらどないしょ思た。ここに書いてあるんやけど BとAは相性悪いんやて。天敵て書いてある。
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
43「粗食」
高血圧のもんはあきまへん。みんな塩で味誤魔化しよるから。味噌汁なんか だだっ辛いばっかりですわ。そやけど 糖尿病治そ思たら チョーエキ行きなはれ。一年ぐらい行ったら 治りまっせ。あそこはホンマ粗食やからな。
~塀のうちそと~
43「粗食」
高血圧のもんはあきまへん。みんな塩で味誤魔化しよるから。味噌汁なんか だだっ辛いばっかりですわ。そやけど 糖尿病治そ思たら チョーエキ行きなはれ。一年ぐらい行ったら 治りまっせ。あそこはホンマ粗食やからな。
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
42「鍵」
わしもビビリのおっさんになってしもて…。夜寝るとき 枕元にケータイ置いとくのは当然として 部屋の鍵はかけンときまんねん。急な病気で動けんようになって 救急隊が来てくれた時 すぐ入って来れるように。そやけど昼間 外出するときは鍵かけまっせ。盗られて困るもんはなんにもないけどな。
~塀のうちそと~
42「鍵」
わしもビビリのおっさんになってしもて…。夜寝るとき 枕元にケータイ置いとくのは当然として 部屋の鍵はかけンときまんねん。急な病気で動けんようになって 救急隊が来てくれた時 すぐ入って来れるように。そやけど昼間 外出するときは鍵かけまっせ。盗られて困るもんはなんにもないけどな。
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
41「文化人」
入院してましてん。夜中に腹ン中に五寸釘ねじ込まれたみたいに あんまり痛いから かかりつけのセンセに「来てほしい」てケータイかけましてん。大阪からマイカーで来てくれました。ええセンセや。赤ひげみたいなセンセや。ホンマ助かった。え?脅したんかて?「ワレ ちょっと病院まで運んだれや」て?マスター 無茶いいまんなあ。
病院へ本持って行きましてん。菅原センセの『四角い太陽』。看護師がそれ見て不思議そうな顔しとりました。まあ そやわな。わしの体の前うしろには怖いマンガ入っとるしな。本読むガラとちゃうわな。わしもここで色んな人と知り合いになって もう悪いこと出来まへん。あんな人らと仲良うなってしもて。
~塀のうちそと~
41「文化人」
入院してましてん。夜中に腹ン中に五寸釘ねじ込まれたみたいに あんまり痛いから かかりつけのセンセに「来てほしい」てケータイかけましてん。大阪からマイカーで来てくれました。ええセンセや。赤ひげみたいなセンセや。ホンマ助かった。え?脅したんかて?「ワレ ちょっと病院まで運んだれや」て?マスター 無茶いいまんなあ。
病院へ本持って行きましてん。菅原センセの『四角い太陽』。看護師がそれ見て不思議そうな顔しとりました。まあ そやわな。わしの体の前うしろには怖いマンガ入っとるしな。本読むガラとちゃうわな。わしもここで色んな人と知り合いになって もう悪いこと出来まへん。あんな人らと仲良うなってしもて。
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
40「ゴンタ」
将棋会の例会に来よる子どもの中に どもならんゴンタがおる。わし そいつに教育したっとる。「ワルやるんやったら 根性据えてやれ。中途半端なゴンタはやめとけ。わしみたいになってしまうど」とゆうて 両方の手の 千切れた小指見せたるんや。え?あきまへんか?
~塀のうちそと~
40「ゴンタ」
将棋会の例会に来よる子どもの中に どもならんゴンタがおる。わし そいつに教育したっとる。「ワルやるんやったら 根性据えてやれ。中途半端なゴンタはやめとけ。わしみたいになってしまうど」とゆうて 両方の手の 千切れた小指見せたるんや。え?あきまへんか?
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
38「官」
靴や下着 官の物は身に着けん。それがわしらの見栄ですわ。とりあえず 自分で買うてもええもんは 官の支給品は身に着けん。ちょっと違う物 身に着けますねん。
~塀のうちそと~
38「官」
靴や下着 官の物は身に着けん。それがわしらの見栄ですわ。とりあえず 自分で買うてもええもんは 官の支給品は身に着けん。ちょっと違う物 身に着けますねん。
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
37「ナリワルイ」
昔の連れで わしと同じような奴がおって 会うたら言いよる。「わしら 一ぺんも税金払うたことないのに 今 病気して 貧乏して 福祉で食わしてもろて ナリワルイこっちゃのう」て。そやけどわしは 「チョーエキの時 何年もえらい環境で タダみたいな賃金で働かされたやないかえ」て言いますねん。ナリワルイこっちゃ。
~塀のうちそと~
37「ナリワルイ」
昔の連れで わしと同じような奴がおって 会うたら言いよる。「わしら 一ぺんも税金払うたことないのに 今 病気して 貧乏して 福祉で食わしてもろて ナリワルイこっちゃのう」て。そやけどわしは 「チョーエキの時 何年もえらい環境で タダみたいな賃金で働かされたやないかえ」て言いますねん。ナリワルイこっちゃ。
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
36「ガラウケ」
会社(組)やめて 東京におるころ えらい貧乏しとってな。息子 中学生やった。万引きで捕まりよって。東村山署にガラウケ(身柄引き受け)に行ったんや。帰りにラーメン屋で息子に言うてやった。「こんなことばっかりしよったら しまいにチョウエキやぞ。代わってやりとうても 代わってやられへんからな」そう言いながら 貧乏はつらいなあ 思いました。
~塀のうちそと~
36「ガラウケ」
会社(組)やめて 東京におるころ えらい貧乏しとってな。息子 中学生やった。万引きで捕まりよって。東村山署にガラウケ(身柄引き受け)に行ったんや。帰りにラーメン屋で息子に言うてやった。「こんなことばっかりしよったら しまいにチョウエキやぞ。代わってやりとうても 代わってやられへんからな」そう言いながら 貧乏はつらいなあ 思いました。
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
35「三回半」
ダンプカーに乗ってる時やった。仕事仲間が「今日、何回走った?」て訊きよったから 四回の意味で 指四本立てたんや。ほんならそいつ「三回半でっか?」て言いよった。
~塀のうちそと~
35「三回半」
ダンプカーに乗ってる時やった。仕事仲間が「今日、何回走った?」て訊きよったから 四回の意味で 指四本立てたんや。ほんならそいつ「三回半でっか?」て言いよった。
別冊・コーヒーカップの耳
~塀のうちそと~
33「死に方」
ヤクザの死に方には二通りおます。親分の前に立ちはだかって撃たれて死ぬのんが一番カッコええ。そやけど わしの兄貴分の一人は 違いました。現役の時 総理大臣と一緒に写真に写るほどの力持ってましたけど ある時 なに思うたんか 足洗うたんですわ。ヤクザはつぶしが利きまへん。いっぺんに貧乏ですわ。病気しても見てくれる者おらんし 一人で死にました。それも 死んでから三月もしてから見つかりましてん。検死でも死因が分からんほど腐ってしもて。これもヤクザの立派な死に方やとわしは思てます。わしでっか?わしも足洗うてから やっぱりこないして貧乏やし そのうえ病気持ちです。そやけど そんな 誰にも知られんと腐るような カッコええ死に方はできまへん。夜寝るときは 部屋の鍵 開けて寝ます。救急隊が来てくれた時 すぐに入って来れるように。
~塀のうちそと~
33「死に方」
ヤクザの死に方には二通りおます。親分の前に立ちはだかって撃たれて死ぬのんが一番カッコええ。そやけど わしの兄貴分の一人は 違いました。現役の時 総理大臣と一緒に写真に写るほどの力持ってましたけど ある時 なに思うたんか 足洗うたんですわ。ヤクザはつぶしが利きまへん。いっぺんに貧乏ですわ。病気しても見てくれる者おらんし 一人で死にました。それも 死んでから三月もしてから見つかりましてん。検死でも死因が分からんほど腐ってしもて。これもヤクザの立派な死に方やとわしは思てます。わしでっか?わしも足洗うてから やっぱりこないして貧乏やし そのうえ病気持ちです。そやけど そんな 誰にも知られんと腐るような カッコええ死に方はできまへん。夜寝るときは 部屋の鍵 開けて寝ます。救急隊が来てくれた時 すぐに入って来れるように。