ありえへん…

　4年前に某テレビ局のバラエティー番組『ありえへん世界』の収録をした事がある。
　この時は営業中に収録をしたので、テレビに出る2人のお客さん以外の居合わせたお客さんは、カメラに映らない場所に追いやられた上に、カラオケ無し、ヒソヒソ話、あるいは沈黙するなどお通夜みたいになり、いつもは笑いが絶えない店内が『ありえへんスナック』になった。
　テレビに出るお客さんは、テレビ局のスタッフが「お客さんを呼んどいて下さい」との要請で依頼した近所の会社の所長さんで、部下も連れて来た。
　スタッフの要望は、スナック芸を決めた後に“どや顔”をして、との事だったが、「顔が優しい、もっとキツイ顔をして…」と何度もダメ出しされ、所長さんをニラミつける構図になってしまい、普段は笑顔をふりまく私が『ありえへんマスター』になってしまった。
　2日間かけて念入りに収録をしたので放送を楽しみにしていたが、運悪く放送予定日前に東日本大震災が起きて放送がボツになり『ありえへん世界』が『ありえへん事態』に。
　収録後、「テレビに出るから」と、会社や知人に宣伝するなど喜んでいた所長さんは「放送が無く恥をかいた」と、当分の間店に来なくなり、これまた『ありえへん余波』を招いた。
　そんな悲喜こもごもの出来事もとっくに忘れていた昨今であったが、昨日の昼、テレビ局のスタッフから「4年前に収録した『ありえへん世界』を6月16日(夜７時54分～）に放送します」との電話があった。
　全く諦めていたので、予期していなかった喜ばしい知らせに、妻と「こんなこと、ありえへんなあ」と顔を見合わせた。

　一句：様々な　ありえへん事に　揺れ動く　　
　謎かけ：ありえへんとかけて、経験が浅い刑事と解く。どちらも(考えられない・勘が得られない)です