まくとぅーぷ

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一歩前へ〜共感講座・若松誠/海外スナップ撮影の極意〜

2017-03-18 20:19:06 | 日記


趣味の写塾、という遊び場に参加するようになって
数年経つ。

講義なんかもあるにはあるけど
基本的にはカメラマンのマッキー師匠と一緒に
みんなでゆるっとふわっとお散歩しながら
いろんな写真を撮って見せ合う。
同じところに同じ時間にいたはずなのに
撮る人によってまったく印象の違う写真が
出来るのが面白い。

若松さんはそのお散歩メンバーのひとり。
一番最初の参加は2013年2月だと伺って
ちょっとびっくりした。
そこからの4年での彼の活躍ぶりったら素晴らしいもので
コンテスト出品、個展開催、写真集発売など
「アマチュア」の域は軽く超えている。

私は彼が撮る異国の老人の写真が好きだ。
その老人の心の中も、それまでの物語も
知ることはできないけれど
写真に切り取られた外観ににじみ出ている
生き様に心揺さぶられる。
どうやったらそんな写真が撮れるのか
一度聞いてみたいと思っていたけど
お散歩の時の彼を捕まえるのは至難の技だし
(なんでも、ここと決めた場所に
ものすごく粘り強く貼り付いているらしい)
飲み会の席ではだいたい酔っぱらっちゃってるし。

だから今日のイベントはとても楽しみだった。
いつもはプロのカメラマンの講義をするイベントで
今回はアマチュア初出場。
それだけになかなかスリリングな場面も
多かったけれど
(2時間の持ち時間でプレゼン40分で終わっちゃったとかね)
とても興味深い話をたくさん聴けた。

印象的だったのはカトマンズの撮影。
テーマは輪廻転生。
他の国でもそうだけど
若松さんの掲げるテーマはとてもヘヴィだ。
それが彼の普段の様子からは乖離しているのが面白い。
人が死ぬと彼らは焼いて水をかけてそれから川へ流す。
立ち上る煙は次のいのちへの序章。
亡くなったおじいさまへの想いや
いずれ自分も、という感傷も
写真に込められている。
プリントをあえて和紙に施したことで
独特のざらつきや既視感を表現している。

一方でとても若松さんらしいショットというのは
道を行く人たちの目線をがっつり捉えたもの。
50㎜レンズがスタンダードということは
相当な至近距離からの撮影となる。
まずはアピール。手を振る。カメラ振る。
向こうが気づく。近づいて行ってphoto,ok?
それからは身振り手振り、得意な英語も使って
様々な表情を引き出していく。
「一歩前へ出る、勇気がいることだけど、それが大事」

時々、仕事で先生のプロフィール写真を撮影する私。
「こ、こんな近いんですか!」とひるんだように
言われることが多い。(まあ17mmだしね)
それでも仕事だからバンバン近づいて撮れるけど
もし街でフリーにその辺の人を撮るとなったら
そこまでいけるか全く自信ない。
怒られたらやだな、とか、変な奴だと思われたらどうしよう、とか。

それでも一歩先に行ける原動力、それは
良い写真が撮りたいから、という情熱に他ならない。
先日伺った岩崎氏の話にも同じような話があって
写真家には必須な力なのだと思う。

若松さんは踏み込む力をつけるため、あえて
焦点距離の短いカメラで訓練したのだそうだ。
被写体にグッと近づいて撮る彼の写真の
半端ないインパクトは一度見たら忘れない。

どうして写真を撮るのですか、という質問に
若松さんは考えを巡らせ、何度か他の話題にも行き来した後
「自分の生きた証を残したいから」
とおっしゃった。
「自分の写真を見た誰かになんらかの影響を与えることができたら
 少しでも何かの役に立てたなら嬉しい」

同じ年の私にはそれがとても深く刺さった。
私の生きた証。
なんだろう。

そんな素敵なお話をしてくださった直後に
缶ビール片手に隣にいる友達のモノマネ
(似てないしヒドイの)
をやっちゃう若松さんが
ますますチャーミングに思えた。

権蔵さん、(若松さんのことね)
楽しいお話をありがとうございました。
企画のマッキー師匠、
とっても面白かったです!次回も楽しみです。