まくとぅーぷ

作ったお菓子のこと、読んだ本のこと、寄り道したカフェのこと。

タカの産んだトンビ

2017-03-17 07:20:14 | 日記
教育サービス業の会社にいるので
一緒に働いてる人には
もともと学校や塾の先生でした、という
方が少なくない。

私も小学生くらいの時には
頼れる担任の先生を見ていて
ガッコーの先生になりたいなあと
思ってたことがある。

大学で英語を専攻していて
クラスのほぼみんな教職免許を
取ろうという動きだった。
それはでも先生になることを
熱望してるというよりは
使うかどうかわかんないけど
頭痛薬を一応カバンに入れとく
みたいな感じだった。

友達にノート借りたりしながら
一揃い単位を集めて
さあ、あとは秋に教育実習のみ。
ところが超売り手市場の当時
初夏にはすでに民間企業から内定が出て
夏休みをバイトと遊びに費やした挙句
うっかりその日を忘れた。
電話口で母校の先生が烈火のごとく怒っている。
今考えると本当に申し訳ないことをしたと思うが
その時は、実際に菓子折り持って謝りに行ったら
うすらぼんやりした対応のみだったので
なんだ、別に行かなくてもよかったんじゃん
と考えていた。学生ってダメだな。
違った、学生の頃の私ってダメだな。

話を戻すと
実際の先生の仕事は本当に多岐に渡っていて
勉強を教えるだけじゃなくて
子供や保護者の心のケアもしなきゃならないし
組織に属していればあれこれ事務手続きもあるし
何より、人間が育っていく過程に関わるって
とても責任のある仕事。

進学塾で国語を教えていたという同僚さんが
ある時小学5年生の男の子を担当していた。
彼は真面目でおとなしくて良い子で
ゆっくりと学習を進めるタイプ。
歩調合せて一緒に進んでた同僚さん。
しかし彼の母親はそれができなかったそう。

母親も父親も高学歴、なのに
なんで自分たちの子供がこんなにスローペースなんだろうと
あれこれ悩んだ結果
きっとどこか悪いところがあるんだと考えて
専門的な機関へ彼を連れていく。
特に異常は見当たりませんけど、と言われると
別のところへ連れていく。
「4軒目でやっと、発達障害の疑いがあるって言われました。」
と、清々しい表情の母親から報告を受けた同僚さんは
いたたまれない気分になった。
それは違うと思う、と彼のためには言いたいけれど
そうやって理解できない現象に名前がついたことで
ようやく心の平穏を取り戻した母親にそんなことしたら
また彼は連れ回されてしまうだけだ。
程なく彼は塾をやめたので、その後どうなったかは
同僚さんにはわからない。

もう何年も会社で新人の先生たちのために
実践的な講座を担当してくれている
ベテランの先生がいる。
おそろしく頭の回転が早くて
伝えたいことがたくさんあるので
講座はマシンガントーク炸裂。動作も素早い。
その先生がこんなことをおっしゃっていた。
「今、発達障害の子が多いっていうけど
そういう子は昔からいるよね。
ただ、そういう名前で呼ばれてなかっただけで。
私なんか今小学生だったら絶対、多動症って言われてる。」

トンビがタカを産むっていうけど
トンビとタカに優劣があるのか
前から疑問に思ってた。
種類が違う、特性が違うというだけだ。
タカにできなくてトンビにできることだってあるだろう。
でも、私もそうだったけど
親というものは子供のことを自分の分身だと思ってて
なかなか、別の個であると認識するのが難しい。
私がタカなんだから息子もタカであるはずでしょ、と
思うのは仕方がない。
いいんだよ、お母さんがタカだって、君がトンビだって。
って言ってくれる大人が周りにいてくれる子供は幸運。
実習をぶっちぎった私が言うのもなんだけど
そういう大人になりたい。