お友だちに連れていってもらい
渋谷のインドネシア料理店へ。
素材や調味料が多様で賑やか、
テンションあがるごはんたち。
最初に入った会社で、
二年目に参加したプロジェクトは
某銀行ジャカルタ支店の
システム移行だった。
準備万端ととのえ、いざ渡航。
というときに起きたトラブルは
責任者である部長の足止め。
しかもその理由が笑える。
「女癖悪いあいつを、若い女子社員二人と一緒に海外に出すのはいかがなものか」
という苦言が、よその部長から社長に入ったのだ。
確かによその部の女子にはモテモテだったけど、さすがに自分の部下には手を出さないだけの分別はあるのに。
ってそれを分別というのかどうかは別として。
そのご親切な忠告のおかげで
私は先輩と二人、こっそりスーツケースにリール二本隠し持って
おっかなびっくり日本を発った。
現地には急遽シンガポール赴任中の課長が立ち会いに来てくれて
そこから一ヶ月の移行作業がはじまったのだった。
お世辞にもよいとはいえない治安の街で、
とにかく外を生身で出歩くなときつく言い渡され
ホテルと職場の往復はタクシーで。
まるっと一月借り上げ、運転手つき。
屋台のインドネシア料理なんて食べられず、ホテルやビル内のイタリアンだの中華だの怪しい和食だの。
朝食もはじめ1,2回はホテルのビュッフェにしたが、おいしくないうえに高いので
仕事帰りにそごうに寄って、パンとジュースとバナナを買っていた。
まっさおな皮のなかに、鮮やかなオレンジ色の果肉。ばきばきに固いやつ。
いちど、ランブータンも買ったけど
仕事から戻ってきたら絨毯にありんこが大量にわいており、それきりやめた。
先輩も私も、娘思いではあるがちょっとだけ天然な母を持っており
私はスーツケースに無理矢理
重たい羊羮二棹も入れられ
先輩にはある日ホテルの部屋に
はじっこがべしょべしょの段ボールが
届けられた。
開けると漬け物各種、開封して汁を抜いたのち、輪ゴムどめ。だがしかし当然のように液漏れしていた。
段ボールを運んできたボーイの
心底迷惑そうなカオったら。
二人してホテルの部屋で
羊羮と漬け物を交互にかじりながら
爆笑した。
ようやくリリースし、引き継ぎのため
シンガポールへ立ち寄って
そこではじめて、南国の料理を堪能。
甘く濃いピーナツソースのかかった焼き鳥、スパイシーな炒めごはん。
白身魚を蒸してナンプラーベースのたれをかけたものは、白いご飯に乗せてかきこむとたまらないうまさ。
現地勤務の日本人行員(独身男子)が
こんなことを云ってぼやいてた。
なんで日本から来る女の子たちは
ローカルの男の子たちに恋するんだろうね?
確かにやさしいかもしれないけど
もし家庭を持ったりしたら、
魚が釣れたら魚を食べ
釣れなかったらマンゴーを食べる
そんな暮らしだよ?
確かにそうだけど
まあ、なんかは食べられるのなら
いいのかもしれない。
一ヶ月、仕事はきつかったし
イスラムの文化には戸惑うことも
たくさんあったのだけれど
なんだか思い出すのはみんな
食べ物にまつわることばかりで
おいしいのもおいしくないのも
めずらしくて面白くて楽しかった。
そんなことを思いだしながら
おさとう壺に座ってる
かわいいカエルに見守られ
どろどろコーヒーを飲んだ。