雲のむこうはいつも青空

まったりもったり~自閉症息子のいる暮らし@ちびくまママ

巣立ち

2009年03月07日 | 驕らず焦らず諦めず
今日は、息子が地元の教育大学の臨床心理センターで
最後の訓練を受ける日でした。

初めてここを訪れたのは、アメリカから帰国して
半年経った、2000年の秋。

英語しか理解できないことから受け入れを拒まれたり
アメリカの系統だった指導支援に比べてあまりに
彼の特性に沿わない旧来式の障碍児教育を受けるなかで
混乱し、自信をなくして笑顔が消え、
パニックが増え、どんどん退行していく息子に
どこか救いが得られないかと児童相談所に相談して
心理員さんからF教授に紹介してもらったのが
そもそものきっかけでした。

小学校に入学して先生に恵まれ、息子が元通りすっかり明るくなり
どんどん成長し始めてからもその時その時課題となる
ピンポイントのスキルに焦点を合わせながら
毎年大学院の臨床心理コースの院生さんに引き継がれた指導は
この春まで8年半にわたって週1で続いてきました。

最初は部屋に入ること、椅子に座ること、与えられた
課題に取り組むことという目標から始まって

はさみ、お箸、衣類の着脱、ボール投げ、ラジオ体操、
オルガン演奏、トランプ遊び、だるまさんがころんだ、
ベルトを締めたりはずしたり、靴紐結び・・・
すべてここで教えてもらいました。

今春、担当のF教授が定年退官されるにあたり
Fゼミの院生さんたちによるこの指導も終了することになり
今日がその最終日となったのです。

いつもどおりの内容に加えて、今日はプチ終了式を
用意していただきました。
F教授自ら終了証を手渡してもらった息子は
小学校の卒業式で学んだやりかたで
押し頂いて受け取り、「9年間、ありがとうございました」と
自分で考えて挨拶しました。

この日が息子の最後の訓練セッションだというので
過去に担当してくださった先生たちが何人か来てくださっていました。

どなたも現在は学校現場や発達障碍児者支援の現場で活躍しておられる
方々でしたが、息子の成長ぶりに目を細めておられました。
通い始めたころとはまるで別人だと、幼児期の息子を知る先生は
支援指導の可能性に改めて光を見た、と言ってくださいました。

就学前の辛い時期も、順調な時期も、いつでも息子のことを
一緒に考えてくれる人たちがいたこと、
私が「母親であること」だけに専念できるよう
「訓練」の部分をしっかり科学的に支えてくれる人たちがいたこと、

改めて私と息子はとても恵まれた環境にあったのだと思います。

最後にみんなで記念写真を撮ったあと、息子が教授に
「しゃしんをとってもらって、とてもうれしかったです。
 9年間、ありがとうございました。
 これからもがんばります」
と挨拶したのを聞いて、教授が
「おかあさん、この子、本当にいいねえ。
 いい子に育ててこられましたね」
と言ってくださいました。

私はいつも、息子にとって安心できる存在であることと
息子が安心して暮らせる環境を整えることしかしてこなかったけれど
これはなによりも嬉しい褒め言葉でした。

これまで長い間当然のようにそばにあった大きな支えを
これからは頼らずにやっていかねばならないけれど

ここでもらった息子自身の自信、私自身の自信、
そして私と息子の間の信頼関係が
これからの息子と私を導く大きな力に
きっとなってくれると思っています。