雲のむこうはいつも青空

まったりもったり~自閉症息子のいる暮らし@ちびくまママ

得たものと失ったもの。

2005年11月11日 | adorably autistic
掲示板のほうで、たぶんまだ子どもさんが自閉症の
診断を受けたばかりなのだろう若いお母さんと
やりとりをして、ふと考えました。

息子が自閉だったことで、私が失ったもの、そして
得たものはなんだったのだろう、と。

《失ったもの》
・それまでのママ友の大部分(まあ、結局、一緒の幼稚園に通っているとか
 家に呼び合って一緒に遊べる、というだけでつながっていただけなのかも)
・夫との友好関係(爆)
・息子を一流私学中・高から一流大学に入れ、一流企業に就職させよう、という
 野望(笑)
・せっかくのアメリカ駐在中に、アメリカ各地を旅行する機会
・同じく駐在中に、現地の大学院へ進学する機会
・どっかの企業にフルタイム正社員として再就職する夢
・健常児・者は障碍児・者より優れている・恵まれているという思い
・7号と9号の洋服(爆)

《得たもの》
・息子をキーとした、沢山のお母さん仲間、当事者の方々、学校の先生を
 はじめとする支援者の方々との出会い。
 特に「ことばと発達の学習室」掲示板での出会いを抜きに、
 私のこの7年は語れない。
・発達障碍についての知識。
・パソコンとネットのスキル。
・車とバスについての知識(笑)
・目の前の子どもをつぶさに観察する鋭い(?)眼。
・IQも偏差値も関係なく、何ができてもできなくても
 「うちの子が一番!」と満足して暮らせる安らぎ。
・自分が子どもを愛している、そして子どもにも愛されているという自信。
・診断前後に暴飲暴食に走ったために得た10キロの体重(小学校入学後の
 ダイエットで、半分は返上しました)

で、結論。
息子が自閉症に生まれてきてくれたおかげで、私は失ったものより
得たもののほうがずっと多かった。
診断直後には自分の失うものにしか眼が行かなくて
とてもそんな風には思えなかったのだけど、
今なら胸張っていえるのです。
「息子が自閉症でよかった」と。
自閉症で良かった、というより、息子が生まれてきてくれて、
生きていてくれてよかった、と言うほうが正確かもしれない。

今日、夕方一緒に買い物に出かけた帰り道、息子が
「ぼくは雨が嫌い。市民会館が嫌い。インターホンが嫌い」と
嫌いなものを挙げつづけるので
「じゃあ、ちびくまくんが好きなものは何かな?」と訊くと
彼はこう答えました。
「あのね、おかあさんだよ」

私も、子どもが自閉症ならもう2度と自分は幸せに
なれないと思っていた。
未来が怖くて、何度も息子と一緒に逝ってしまおうと思った。
でも、今なら、あの時、一線を越える方向に私の勇気を使わなくて
本当に良かったと思えるから

彼女にも何とかこの一番辛い時期を乗り越えて欲しい、と思います。
せめて一線だけは越えないで欲しい、と思うのです。

嵐の日には見えないけれど、雲の向こうには
いつも青空があるのだから。

彼女のことを心配して、何度も見に来てくださる皆さん、
一生懸命書き込んでくださった皆さん、ありがとう。
親の辛い気持ちの書き込みを読んで、辛くなっているだろう
当事者の皆さん、ごめんなさい。
どうか皆さんのやさしい気持ちが、熱い思いが、
閉ざされた彼女の胸に届きますように。
今すぐでなくていい、いつか彼女の凍りついた心を
溶かしてくれますように。