雲のむこうはいつも青空

まったりもったり~自閉症息子のいる暮らし@ちびくまママ

「聞き取り」のスキル

2005年09月10日 | 「発達障碍」を見つめる眼
ちびくまは、5歳の秋から某大学の臨床心理センターで
週1回の個別指導を受けています。指導にあたるのは、大学院生ですが、
この大学院、ちょっと変わっていて、院生は殆どが現役の
学校の先生なんです。

1時間のセッションの間、私は隣の観察室でモニターを見ながら、
スーパーバイザーである教授や、院生である先生と
家庭や学校での様子やセッションを見て感じたことなどを
お話しさせてもらっています。

ここで必ず体験するのが、親への「聞き取り」です。
春はこれまでの生育歴が中心、秋は次年度への課題設定のために
親の希望を聞き出すことが中心です。

毎年2回、これを5年繰り返してくると、この「聞き取り」にも
微妙なテクニックがあって、上手い人とそうではない人の
違いがはっきりしていることがわかってきて、面白いんですね。

過去には、「生まれてからこれまでのことを話してください」の
一言だけで、生育歴を聞こうとした人もいたし、
(ちゃんと親が話しやすいように「お子さんがちょっと(定型発達とは)
 違うと思ったのはいつごろ、どんなことですか?」とか、 
要所要所でプロンプト出してくださいね)

「言葉のほうをもう少しなんとかしたいですね」と言ったら、
「保護者が言葉をなんとかしてくれと言ったから」といって
いきなり図書館で本を山盛り借りてきて、でも、息子には見向きもされないで
轟沈した先生とか
(保護者の要求をそのまま受けるのではなく、まず子どもの状態をアセスメントなどで
 しっかり把握してから指導案を立ててください。反対に、子どもが食いつく
 教材選びには、親の意見は有効に使えます)

「キーボードの指導を続けて欲しい」と言ったら、
「何の曲を指導しましょうか」と訊いて来た先生
(課題を保護者に丸投げにするのはやめたほうが無難だと思います。
「●●とXXではどちらがいいでしょうか。
 それとも他に特にご希望があれば・・・」と指導の主導権はあくまで
 先生が持ち、保護者の意見を取り入れて柔軟に対処する、という姿勢が
 保護者の信頼を得やすいと思います)

教科書的にはすっごく自閉症のことを勉強している事はよくわかるんだけど、
いまいち今目の前にいる子どもやその親の個性を加味する余裕がないな
と感じられる先生。(マニュアルどおり、っていう感じですかね)

今日の先生は、熱心でよく勉強されているのはすごく伝わってくるんだけど、
まだ「親から自分の必要な情報を引き出す」テクがもうひとつかな、と
いう感じがしました。

例えば。
「1年後のお子さんの目標はなんですか?」

まあ、そういう視点は大切ですし、年単位のIEPの勉強もしておられるからこそ
そういう発想になったのだとは思うんですが、親、特に母親は「生活者」ですから
なかなか「指導者」と同じ時間感覚でものを考えることができません。

これを例えば

「お子さんが今、もうちょっと上手く教えたらできそうなんだけどな、と
 思っていらっしゃることはありますか?」
とか
「小学校を卒業する(うちの場合はあと1年半)くらいまでに
 できるようになって欲しいな、っていうことはありますか?」

と訊いてもらえば、「生活者」の視点からの「芽生え反応の存在」や
(1年後くらいの)「短期目標」をもっと容易に引き出せると思うんですけどね。

・・・こんなことをつらつら考えながら「聞き取り」に答えてる
私もかなり嫌な奴かも(笑)
しかも年々、先生の訊き方がもうひとつだな、と思うと、わざと
「さあ、どうでしょう?」
「さっぱりわかりません」
ととぼけてしまう、イジワルなお母さんになってきているので
先生たちは大変かもしれない。


でもね、これから、特別支援教育、という現場に立たれる先生は
以前よりずっと「立場の違う人と連携する能力」が要求されるように
なると思うんです。そのためには、「自分のモノサシ」や
「学校のモノサシ」だけでなく、「相手のモノサシ」に敢えてあわせることで
自分の必要な情報や援助を引き出す力もとても大切だと思うのです。

そのあたりに気がついて下さるといいな~、なんて願いながら、
今日もナマイキ母は、「教育相談」を「受けて」いたのでした。