F老人の気ままな島暮らし日記

尾道市生口島で気ままな島暮らしの日々。

読書記録089「藍染袴お匙帖-7-桜紅葉(藤原緋沙子)」

2013年03月05日 08時05分15秒 | 読書記録

 「桜紅葉」とは、秋に桜の葉が紅葉すること。また、その葉のことです。秋の季語です。

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美濃のある藩で、夫の酒乱と暴力に耐えかねた妻が縁切寺に駆け込みました。逆上した夫は寺の役人を殺し、逃亡します。役人の子息清四郎は敵を討つため江戸に出ます。それに下男が付き添い、幼い頃から清四郎を慕っていた下男の妹おぶんも江戸に出てきます。敵を見つけた下男は殺され、おぶんは献身的に尽くそうとします。おぶんが10歳の頃、桜もみじをかき集めていると清四郎が来ます。父親に身分の違いを諭されていたおぶんは逃げようと駆け出して転んでしまいます。清四郎は散らばった落葉を一緒に集めてくれました。二人ともこの思い出を大切にしていました。しかし、清四郎は敵討ちにおぶんを巻き込むのはかわいそうだと思い避けていました。

千鶴や求馬などが支援し、敵を討ちますが、おぶんは足を斬られます。

 

藩主から帰参が許された清四郎はおぶんに「一緒に帰ろう」といいますが、おぶんは「足手まといになるだけです。この足は元には戻りません。お屋敷に帰っても台所の仕事も満足にできません」といいました。

 

清四郎は「おぶん、私はお前に台所仕事をさせるために一緒に帰ろうと言っているのではないぞ。私の妻として連れて帰るのだ」といいます。硬直するおぶんに清四郎は「・・・遠い昔、あの桜紅葉の続く道でお前と落葉を拾った時、おぶんを妻にするんだと、俺はきっとそうなるに違いないと、そう思ったものだ」といいます。涙を流すおぶんを見ながら千鶴は桜紅葉が続く小道を、いたわり合って行く二人の姿を思い浮かべます。

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