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F老人の気ままな島暮らし日記

尾道市生口島で気ままな島暮らしの日々。

読書記録092「隅田川御用帳-9-紅梅(藤原緋沙子)」

2013年03月20日 23時30分40秒 | 読書記録

第4話の「残る雁」が印象に残ります。春になって皆北に帰っていくのに、群れに入れてもらえなくなった仲間はずれの雁や、傷を負ったり病んだりして帰れなくなった雁を、「」残る雁」といい、不運にみまわれ世間から取り残されている兄妹が自分たちを例えてそういうのです。多分にひがんだ言い方だと思うのですが、人間が陥りやすい感情です。

約10年前、昼休みの散歩で寄ったある神社で「天を怨まず、人を妬まず」と書かれているのを見て、なるほどと思いました。確かに人間には自分の力ではどうしようもないことがありますし、常に他の人と比べて自分を見出す習性もあります。しかし、運命、境遇を素直に受け入れ、他人と比較することなく自分を受け入れると大変楽になり、嫌な思いもしません。

塙十四郎は、自分のことを残る雁だといった女の前途を祈って「そんな筈があるものか、お前の人生はこれからだ。」と言います。

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読書記録091「隅田川御用帳-8-夏の霧(藤原緋沙子)」

2013年03月13日 23時07分03秒 | 読書記録

久しぶりに「隅田川御用帳」シリーズに戻ってきました。深川にある駆け込み寺「慶光寺」とその受付であるような寺宿「橘家」。未亡人である主人お登勢と用心棒兼補佐役塙十四郎、寺役人近藤金五、番頭藤七などが繰り広げる物語です。色々な事情で別れたいと駆け込む女性を軸に物語は展開されますが、第4話「母恋草」は仇討ちです。

地方の小藩の上級藩士である片岡家は庫之助が当主でしたが、年上で庶子の市之丞がいました。粗暴でひがんでいましたが、庫之助の妻美佐は市之丞をかばいます。しかし、それが裏目に出て市之丞は横恋慕し、ついには庫之助を殺し、美佐を連れて出奔します。

庫之助の息子慎之助は母の不義を疑いつつ家士とともに敵討ちに出ます。江戸で賭場の用心棒になり荒れた生活を送っている市之丞を発見し、十四郎の指導を受けた慎之介はなんとか本懐を遂げます。拉致された母親はその直後、舌を咬み切り自害していました。市之丞が住んでいた裏店で母親の遺髪を見つけ、 むせび泣きます。

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読書記録090「藍染袴お匙帖-8-月の雫(藤原緋沙子)」

2013年03月08日 22時10分41秒 | 読書記録

上野国(現代の群馬県にほぼ一致するそうです。)の生糸問屋が不正を働く役人と悪徳商人に乗っ取られ、娘は吉原へ売られて行きます。やがて、花魁となった娘のところへ今は大きな生糸問屋となった悪徳商人の息子が客として現れます。花魁は剃刀でその息子を殺します。

絶望的な状況の中で、求馬と千鶴は、悪を暴き、金の力で出世していた不正役人と悪徳商人を糾弾し、花魁を助け出します。

吉原は浅草の北、今も歓楽街です。

江戸時代の吉原の地図です。

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同じ場所の現在です。上の赤線の曲がった道がそのまま残っています。一度見に行きましたが確かに曲がっていました。

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読書記録089「藍染袴お匙帖-7-桜紅葉(藤原緋沙子)」

2013年03月05日 08時05分15秒 | 読書記録

 「桜紅葉」とは、秋に桜の葉が紅葉すること。また、その葉のことです。秋の季語です。

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美濃のある藩で、夫の酒乱と暴力に耐えかねた妻が縁切寺に駆け込みました。逆上した夫は寺の役人を殺し、逃亡します。役人の子息清四郎は敵を討つため江戸に出ます。それに下男が付き添い、幼い頃から清四郎を慕っていた下男の妹おぶんも江戸に出てきます。敵を見つけた下男は殺され、おぶんは献身的に尽くそうとします。おぶんが10歳の頃、桜もみじをかき集めていると清四郎が来ます。父親に身分の違いを諭されていたおぶんは逃げようと駆け出して転んでしまいます。清四郎は散らばった落葉を一緒に集めてくれました。二人ともこの思い出を大切にしていました。しかし、清四郎は敵討ちにおぶんを巻き込むのはかわいそうだと思い避けていました。

千鶴や求馬などが支援し、敵を討ちますが、おぶんは足を斬られます。

 

藩主から帰参が許された清四郎はおぶんに「一緒に帰ろう」といいますが、おぶんは「足手まといになるだけです。この足は元には戻りません。お屋敷に帰っても台所の仕事も満足にできません」といいました。

 

清四郎は「おぶん、私はお前に台所仕事をさせるために一緒に帰ろうと言っているのではないぞ。私の妻として連れて帰るのだ」といいます。硬直するおぶんに清四郎は「・・・遠い昔、あの桜紅葉の続く道でお前と落葉を拾った時、おぶんを妻にするんだと、俺はきっとそうなるに違いないと、そう思ったものだ」といいます。涙を流すおぶんを見ながら千鶴は桜紅葉が続く小道を、いたわり合って行く二人の姿を思い浮かべます。

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読書記録088「藍染袴お匙帖-6-恋指南(藤原緋沙子)」

2013年02月18日 22時52分07秒 | 読書記録

夫の仇を討つため、女郎に身をやつしている女、伊予に救馬の友人金十郎が惚れて恋の病となりました。仇は伊予に横恋慕した傍若無人で凶暴な男でした。男は出奔して伊予の夫を殺したのち、江戸で悪業を重ねていました。千鶴と救馬、金十郎の尽力で仇を追い詰めますが最後は司直の手に渡して死罪とする道を選びました。金十郎は恋を諦めます。伊予は元の武家の妻の姿に戻り千鶴に挨拶に来ます。その姿は凛として美しく、金十郎に見せなくてよかったと千鶴は安堵します。伊予は老母を介護するため故郷に帰りました。

この巻には、3話あります。千鶴が治療に行ったり、出かけたところを江戸切絵図で調べ、現代の地図にだいたいの場所をプロットしてみました。

赤い星が治療院のある道有屋敷です。赤い円は、常に定時退社で、運動のため東海道線始発駅東京駅まで歩いていたF老人が1時間で歩ける距離を中心を道有屋敷に置き換えたものです。

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往診先もほとんど徒歩で1時間以内にありました。定廻り同心は歩くのが速かったそうです。着流し、草履ばきで八丁堀から深川、高輪などたいていの場所は1時間以内で歩いていたそうです。

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