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F老人の気ままな島暮らし日記

尾道市生口島で気ままな島暮らしの日々。

読書記録097「剣客同心鬼隼人(鳥羽亮)」

2013年05月03日 22時56分47秒 | 読書記録

数ヶ月、人情噺の小説を読んできましたが少し飽きたので、男性作家の時代小説を読みました。

南町奉行所(南御番所:有楽町駅前に南町奉行所跡のパネルがあります。)の隠密廻り同心長月隼人が直心影流の腕と剛刀兼定で巨悪に挑みます。隼人は32歳、独身、芸者菊乃を愛人に持つ奉行直轄で悪を成敗するためには捕らえるより斬ることが許された、いわば、殺人許可書007番を持つジェームスボンドのような存在です。

同じ隠密廻り同心であった父親が命を落とし、後を継いだ直後の物語では純真で剣を磨く若者でしたが、鬼と呼ばれる同心になっていました。

将軍の近くに仕える幕臣でありながら、猟官のため賄賂を贈り、その原資を得るため、裕福な商家を襲い、金を奪う-そのために町人を利用し、武士には権限の及ばない町方の奉行所をあざ笑う行動に出ます。仕官をえさに腕の立つ牢人を利用し、若い娘をかどわかし、饗応に使います。

町方が動ける政商の別邸で幕臣を捕らえ、隼人は秘剣を使う遣い手との勝負に勝ち、一件落着します。F老人が気に入ったのは、隼人の下で働く岡っ引き八吉です。細引きの先に鉤をつけ、逃げようとする相手の身体や衣服に引っ掛け捕らえます。

悪を断つために知恵を絞る南町奉行筒井紀伊守、隼人、八吉、得難い人物がそれぞれの立場で悪に向う-しばらくはまりそうです。

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読書記録096「隅田川御用帳-13-さくら道(藤原緋沙子)」

2013年04月26日 23時09分17秒 | 読書記録

塙十四郎は慶光寺の主万寿院の命でかって大奥で万寿院に仕えていた「おさん」の様子を確認するため京に向かいます。おさんは一度嫁ぎ、娘ができますが離縁されます。その上、実家は乗っ取られた上、再婚した嫁ぎ先は押し込みに遭い主が殺されます。主が殺されるところを見た娘お結が命を狙われたため、おさんとお結はあるお寺に隠れていました。その上、お結は口がきけなくなっていました。お結を保護するため、おさんから江戸にいる最初の夫であるお結の父のところへ連れて行くように頼まれた十四郎はお結を伴って江戸に帰ってきます。

十数年前、二人の男が商家を襲って三百両奪いました。一人はその金を元手に京で店を持ち、稼いだお金をその商家に送ります。もうひとりの男は別件で島送りになります。島抜けしたその男は京で成功した男ーおさんの再婚相手、お結が慕う義父ーから金をもらおうと京に行き、もめた末、殺してしまいます。それを見ていたお結は義父の秘密を知ったため、口を聞かなくなったのです。

十四郎や与力松波が殺した男を召し捕り、心が解放されたお結は口も聞けるようになります。かって自分と母親を捨てた実の父親よりも一度は犯罪を犯しますがそれを償い優しかった義父が忘れられず、店を再興するため京に旅立ちます。

複雑な物語です。「さくら道」は、義父、母と共に歩いた鴨川沿いの桜並木です。

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読書記録095「隅田川御用帳-12-鹿鳴の声(藤原緋沙子)」

2013年04月11日 22時45分59秒 | 読書記録

鹿が鳴くと書いて「はぎ」と読むそうです。少し調べましたがよくわかりません。3編からなる1冊ですが各編の題名には「鹿鳴の声」はありません。

一番印象に残ったのは、実直で信頼の厚い橘家の番頭藤七の悲恋です。若い頃、手代として勤めていた大店の一人娘おまきと恋仲になりますが、店の将来のためという理由で別離しなければならなくなります。おまきは両親と出かけた先から一人帰ってきて藤七に迫り、一度だけ契を交わします。

その後、藤七は店を離れます。結婚した相手には商才はなく、博打と女に溺れ、店は潰れます。おまきは零落し、岡場所の煮売り屋の女将になります。その店を張り込んでいた藤七は驚きます。煮売り屋は盗賊の隠れ宿になっており、盗賊は捕らえられますがその寸前、おまきは匕首で刺され、藤七の腕の中で死んでいきます。

よかれと思って別れ、独身を続けた結果が大変な不幸に、かと言って使用人と主の娘では添い遂げるすべはなかったのです。父親が形式にとらわれることなく、本当に将来を託すことができるような人間を選ぶべきだったのにと思いますが、ふと、そこまで考えなくていいかと思い直します。

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読書記録094「隅田川御用帳-11-雪見船(藤原緋沙子)」

2013年04月06日 22時20分36秒 | 読書記録

美乃は地震の被害で気を失い、助けられた時には記憶を失っていました。記憶を取り戻せないまま3年が経過し、助けた唐物屋の主人の妻となりますが、あとをつけられ命を狙われていると感じ、橘家に駆け込みます。実は、記憶を失う寸前、殺人事件を目撃していたのです。赤ちゃんの泣き声を聞いたことがきっかけで、自分にも子供がいたことを思い出し、記憶を取り戻します。旗本の妻だったのです。夫は侍女であった女を妻にし、子供ももうけていました。美乃の子供は実家である旗本の家に引き取られ、兄夫婦の嫡男として育てられています。子供と再開しますが母と名乗られず、唐物屋の妻として生きていくことを決心します。殺人事件は解決され、もう命を狙われることはありません。

 子供を授かることなく夫を亡くしたお登勢は赤子をだく夫婦の情景を見て、寂しく一人船に乗って雪を見ます。その時、十四郎が来て、思わず、「いつかあなたの子供をこの腕に抱きたい」と言いかけますが言葉になりません。十四郎はすべてを理解し、「いつかな」とつぶやいてお登勢の手を握ります。

 いろいろな事件を解決し、物語は進んでいきますが、二人の仲はあまり進展しません。お互い、過去を引きずっているのです。

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読書記録093「隅田川御用帳-10-風蘭(藤原緋沙子)」

2013年04月04日 20時57分54秒 | 読書記録

駆け込み寺慶光寺の御用宿「橘家」の女将お登勢が塙十四郎(浪人で橘屋の用心棒兼お登勢の補佐をしています)を慕っていることは周囲のみんなが知っています。そして、十四郎もお登勢に惹かれています。

ある日、十四郎はやくざの用心棒している浪人を助けます。その用心棒は借金を返すため危ない仕事に手を出し、命を落とします。十四郎は残された妻子を託されます。清楚で美しい妻は生活苦から身を売ろうとしますが最後の段階で決意を翻し、十四郎にそれとなく慕っていることをほのめかします。病弱な子供は十四郎になついています。お登勢の周囲の人々はそのような雰囲気の中でやきもきしながら見守り、十四郎の友人で寺役人の金五は十四郎をたしなめます。

結果的に十四郎は妻を別の町人の男に委ね、お登勢のもとに帰ってきます。しかし、それ以上の進展はありません。

その話と並行して不運な女が死んでいきます。死のまぎわ、十四郎に頼んで育ててきた「風蘭」をお登勢に託します。

風蘭は日本原産のランです。

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