数ヶ月、人情噺の小説を読んできましたが少し飽きたので、男性作家の時代小説を読みました。
南町奉行所(南御番所:有楽町駅前に南町奉行所跡のパネルがあります。)の隠密廻り同心長月隼人が直心影流の腕と剛刀兼定で巨悪に挑みます。隼人は32歳、独身、芸者菊乃を愛人に持つ奉行直轄で悪を成敗するためには捕らえるより斬ることが許された、いわば、殺人許可書007番を持つジェームスボンドのような存在です。
同じ隠密廻り同心であった父親が命を落とし、後を継いだ直後の物語では純真で剣を磨く若者でしたが、鬼と呼ばれる同心になっていました。
将軍の近くに仕える幕臣でありながら、猟官のため賄賂を贈り、その原資を得るため、裕福な商家を襲い、金を奪う-そのために町人を利用し、武士には権限の及ばない町方の奉行所をあざ笑う行動に出ます。仕官をえさに腕の立つ牢人を利用し、若い娘をかどわかし、饗応に使います。
町方が動ける政商の別邸で幕臣を捕らえ、隼人は秘剣を使う遣い手との勝負に勝ち、一件落着します。F老人が気に入ったのは、隼人の下で働く岡っ引き八吉です。細引きの先に鉤をつけ、逃げようとする相手の身体や衣服に引っ掛け捕らえます。
悪を断つために知恵を絞る南町奉行筒井紀伊守、隼人、八吉、得難い人物がそれぞれの立場で悪に向う-しばらくはまりそうです。