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F老人の気ままな島暮らし日記

尾道市生口島で気ままな島暮らしの日々。

読書記録102「蜩の記(葉室麟)」

2013年12月09日 21時22分53秒 | 読書記録

読書ペースが極度に落ちており、久しぶりに読みました。2011年度下期の直木賞受賞作です。刃傷沙汰を起こした若い侍檀野庄三郎が3年後に切腹を命じられ、家譜の編纂をしている戸田秋谷の監視のため幽閉先での同居が始まります。凶作に苦しむ村の百姓の面倒を見、死を前に淡々と家譜を執筆する秋谷とその家族の生き方を見て成長するとともに切腹を命じられた理由とその背景よなる謎が解明されていきます。郡方が殺されてその調査に派遣された役人が村の少年を拷問にかけ死なしたことから家老の思惑と藩の負の歴史などの真相が明らかになります。秋谷の長男郁太郎が旧禄を復し、長女薫が庄三郎と祝言を挙げます。幽閉、切腹の原因となった旧藩主の側女であった尼僧との最後の会話は「蝉しぐれ」の牧文四郎とおふくの方のようでもありました。秋谷は従容として切腹の場に臨みます。

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2014年、戸田秋谷:別所広司、檀野庄三郎:岡田准一、薫:堀北真希などで映画化されるそうです。


読書記録101「終わらざる夏(上下)(浅田次郎)」

2013年10月09日 22時00分40秒 | 読書記録

千島列島最北東端の島「占守島」において、終戦(ポツダム宣言受諾、無条件降伏)を過ぎた昭和20年8月18日から21日まで、ソ連と大日本帝国陸軍の間で戦闘がありました。21日日本軍の降伏により停戦、陸軍の最後の戦闘と言われています。ソ連側の発表によりますと日本側の死傷者約1、000名、ソ連側1,567名、捕虜となった日本兵はその後大勢が法的根拠なく拉致されシベリアに抑留されました。

占守島の位置です。ソ連の真の狙いはなんだったのか、理不尽な攻撃の目的、抑留・・・ソ連による北海道分断計画などいろいろな論評があるそうです。

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また、当時、島には日魯漁業の缶詰工場があり、約400名の女子行員が働いていました。ソ連軍の攻撃開始後、上陸したソ連軍兵士に陵辱されるおそれがあるとこれらの「乙女」を20数隻の漁船で北海道に向かわせ、無事についたとの通信を得ます。

浅田次郎氏特有の描き方でF老人には大きなエピソードに対応する大きな木が何本もあるジグソーパズルのように感じられました。そして、小さなピースが丹念に描かれ、大きなストーリーが成り立っていきます。そして、それぞれの木が兵士、市井の名も無き人、子供など多くの人々の生、虚しさなどを描いていきます。しかし、最後には何枚かのミッシングピースがあり、独特の終わり方となっています。

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太平洋戦争の物語を読むと必ず戦争の止め方の難しさにため息が出て、その次に、なぜ始めたのかと同じことばかり考えます。いたたまれないような気持ちになり、いつものような一気読みはできませんでした。


読書記録100「韓国葛藤の先進国(内山清行)」

2013年09月02日 20時35分51秒 | 読書記録

「葛藤」とは葛(かずら)と藤(ふじ)の枝が絡みもつれ合っていることから、「心の中に相反する動機・欲求・感情などが存在し、そのいずれをとるか迷うこと」であり、そして、その結果「人と人が互いに譲らず対立し、いがみ合うこと」という意味だそうですが、筆者によると韓国ではその上に「本当は分かりあいたいのに、うまくいかない」、「努力しているのに、理不尽で不合理な環境がじゃまをしている」というニュアンスが込められているそうです。

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筆者の内山氏は日経新聞のソウル支局長で2012年12月の大統領選挙の結果、韓国の経済・社会・日韓関係・南北関係などを端的に解説してくれています。帯にあるように「なぜこの国はいつも不満なのか?」も・・・

韓国の新聞の日本語版は「落ち目の日本」に対して「成功しさらに伸びつつある韓国」という視点から全てが述べられているように感じますが内実はそうでもないようです。

一番驚いたのは年金制度です。「低負担低給付」が貫かれており、保険料が低い代わりに支給額も少ない。11年度の平均受給額は26万5000ウオン-日本円で約24,000円で最低生活費の約2割です。これでは日本のように「年金生活者」と言う人はすくないのでしょう。経済全体に対する高評価に対する現実の生活、特に貧困比率や自殺者の比率が高い老人層の将来不安、福祉充実の公約と限られた財源など大きな矛盾があるようです。

さらに、李前大統領の竹島上陸、天皇謝罪発言などについて、日本側の反発は明らかに韓国側の想像を超えるものであり、誤算であったという韓国政府内部高官の感想を述べています。

韓国の人口は5,000万人、北朝鮮と合わせるといわゆる朝鮮人は約7,400万人です。ウオンはローカル通貨であるためウオン安を維持しやすくその恩恵で輸出立国を維持してきていますが、国力が付けば必然的に「大国」としての役割を果たすようになるのでしょうか。人口が約6,200万人と大差のないイギリスやフランスと同じように。自己矛盾と将来不安を和らげるため、一丸となって隣国日本を貶めて鬱憤を晴らす-まさかそんなことはないでしょうね。


読書記録099「困った隣人韓国の急所(井沢元彦・呉善花)」

2013年07月29日 21時12分29秒 | 読書記録

かねがね韓国についての本を読んでみようと思っていましたが進んで不快な思いをする必要もないので躊躇していました。呉善花さんの入国拒否の新聞記事を読んで重い腰を上げるつもりで本屋さんに行きました。あまり大きくない本屋さんで呉善花さんの本は新書コーナーに1冊だけ井沢元彦さんとの共著がありました。

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キーワードとして「反日民族主義」、「自国優越主義」があり、刷り込みに近い形で行われてきたそれらの教育と現実-たとえば、社会が富を集積する前に経済が飽和した結果、年金制度などの充実ができないーとの差異によるジレンマなどが感じられます。

いままでの経験からアメリカや日本にいる個の韓国人はそんなこととは無縁でひたすら目の前の生活を豊かにすることに集中しているように見えました。

ただ、儒教-朱子学に基づく価値観、父系血縁主義、孤児養子、それでいて40%がキリスト教徒であることなど一読では理解は困難であり、多面的にもう少し深く勉強してみます。


読書記録098「剣客同心鬼隼人-2-七人の刺客(鳥羽亮)」

2013年05月10日 21時33分44秒 | 読書記録

大火の後、品不足につけこんで莫大な利益を上げる裕福な大店を襲って大金を手にし、一部を庶民にばらまき、義賊と呼ばれた牢人集団がありました。また、火事に乗じて大金を稼いだ材木屋、材木を産出する藩もありました。数年の後、牢人集団は金で堕落したものが多く、手を広げすぎた材木屋は経営難に、材木産出藩は財政がひっ迫します。全てを解決するためにはもう一度大火を起こし、材木需要を作り出すしかない、その暁には牢人を召抱える-一方的な論理を作り出し、手始めに、牢人集団の首魁である道場主を含む七人はは堕落した同士を抹殺し、自分たちは仕官しようとします。

隠密同心長月隼人は斬殺された牢人にやけどの跡があることから推理を始め、七人を追い詰め、最後は事件の全体像を把握し、町方の力の及ばない藩の留守居役を含め、全員が成敗、追捕されます。

道場主との間の最後の勝負は、手首に浅手を受けるものの隼人が勝ります。

悪業を行うものの勝手な論理は現代にも通じます。ストーカーの驚くほど一方的な考えの殺人、相手のことを考えない「オレオレ詐欺」集団など。南町奉行筒井紀伊守政憲の「手に余らば、斬ってよい。・・・・・賊の思うままに、させてはあらぬぞ」、一度言ってみたいものです。

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