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精巣腫瘍と体温

2006-07-28 | 癌全般
熱と腫瘍 ツール・ド・フランスチャンピオンのランス・アームストロング氏に代表されるように、精巣腫瘍は抗癌剤治療によって80%が治癒する。今回、ジョンズ・ホプキンス大学の専門家らは、精巣腫瘍がなぜ抗癌剤で治癒しやすいかという30年以上にわたる疑問を説明した。(Journal of the American Medical Association7月号)
精子は熱に弱く体温の37℃では不安定になり死滅しやすいため、睾丸(精巣)の温度は他の体の部分に比べ数度低い。精巣腫瘍も同様に熱に敏感な性質をもっているため、精巣腫瘍が他の部位に広がると、熱によって脆弱になった癌細胞は、化学療法や放射線療法への反応が高まるとみられる。精巣が下降していない、または体内に留まっている男性における研究では、熱に敏感になるのは細胞の核基質が弱められることが原因と示された。そこでGetzenberg医師らは、癌細胞の核基質の熱への感受性を高める方法を研究している。「われわれは、治療の結果に驚くべき差が生じる睾丸腫瘍と他の癌との違いを特定しようと懸命に試みている。熱、または温熱治療は古くからある治療法であるが、それを成功させるためには癌細胞だけを標的としなければならない。一部の施設では局所温熱療法を行っているが、真の打開策は、全身に広がった目に見えない癌細胞をターゲットとすることである。ゴルフボール大の腫瘍を相手にしているわけではないのだ。人々は全身を温めにこぞって温泉に行くが、癌細胞だけを標的にすることによって効果を上げるだけでなく、正常細胞の基質へのダメージを防ぐとホプキンスのグループは確信している。

ナノ粒子 そこで、彼らは癌細胞の表面の特定のマーカーに付着する鉄のナノ粒子を開発した。それが癌細胞に付着すると、外部磁界によって熱を放つ。それにより癌細胞は化学療法や放射線療法に反応しやすくなる。現在前立腺癌で動物実験中である。また、膀胱癌でも局所に温かい溶剤をまく治療も試みられている。
BBC原文、 ジョンズホプキンス大学原文

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