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細胞内の血管新生阻害は深刻な副作用を起こす

2007-08-27 | 癌の経路・因子
長期間、細胞内部からの血管新生治療を行ったマウスでは、重篤で致死的な有害事象を発症する恐れがあることをカリフォルニア大学ジョンソンがんセンターの研究者らが証明して8月24日Cell誌に掲載された。腫瘍増殖を促進する血管内皮増殖因子(VEGF)シグナリング経路をブロックする新薬アバスチンは、内皮細胞の外部から血管新生を阻害する。アバスチンで約5%の血栓関連事象が起こる。研究者らは、最近第3相まで進んだ小分子の血管新生阻害剤など内部からVEGFを阻害した場合どうなるかを研究した。

マウス実験の結果、半数以上が心臓発作や脳卒中を起こし、他のマウスでも重篤なな体全体の血管障害を発症した。
内皮細胞は、血管内膜を厚くし、血管壁と血液の界面を形成する。内皮細胞は心臓から毛細血管にいたるまで、循環系の内皮を厚くして血流をスムーズにする。この3年がかりの試験で、彼らは、細胞内VEGFが欠損したマウスを作った。細胞内のVEGFの量は細胞外に比べてわずかなため、それほど影響があるとは考えなかった。
しかし、55%のマウスは25週、つまり人間でいえば30歳で死亡してしまった。
細胞外の豊富なVEGFは細胞内VEGFの代替として機能を果たさなかった。細胞外VEGFシグナリングと細胞内VEGFとは別個のものであることが明白になった。しかし、細胞外VEGFは細胞内VEGFの代わりをしないが、その逆は可能であるとみられる。そのため、細胞外VEGFを阻害するアバスチンでは有害事象がそれほど多くない。
血管新生阻害療法は、現在癌の治療に有望なものである。今後、腫瘍部位のみの血管新生阻害などといったアプローチが探求されるべきであろう。

UCLA記事(日本語全文)

参考記事:Cancer Consultants小分子血管新生阻害剤ASA404が肺癌(NSCLC)第2相試験において、プラチナ製剤のみで8.8ヶ月に対し、ASA404併用で生存期間14ヶ月を達成した。


2 コメント

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CELL (くぅたろう)
2007-08-31 18:50:45
CELLのように弩級の論文ばかりが載っている雑誌は、私には敷居が高くてあまりチェックしないんです。(読んでも理解が難しい・・・)

でも、previewなどの解説記事があったりするから、その研究の重要性はかいま見ることが出来ます。FULL TEXTは大学の図書館じゃないから読むことができなかったけれど、読むとしたらpreviewだけだと思います。論文はすごいページ数だから。

今回の成果では、VEGFの細胞内シグナルの働きをはじめて知ることが出来た事とともに、血管病変(脳とか心臓とか)の病因の一端を知ることが出来る事ができたような気がします。

関係ない話ですが、CELLを見てみると、日本人研究者もすごくがんばっているのがわかって、それをどうして、日本の新聞では大きく扱わないのかなあと、そんな事を疑問に思ったりしました。
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そ、そんなに・・ ()
2007-09-01 22:52:04
格調高い論文誌でしたかーhttp://www.cell.com/content/current

細胞内、外の血管新生シグナルの違いがあるようですねー血管新生自体、さまざまなところで起こる生体の必要な作用ですから、影響も大きいのかもしれないです。少なくとも細胞内のシグナルに関しては警鐘を鳴らすよいきっかけになるのかもしれません。アンジオスタチンならどうなのでしょうね。

日本人の研究者の方々、がんばってください!
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