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妊娠/授乳と乳癌リスク

2009-10-08 | 乳癌
授乳と乳癌リスク/米国立癌研究所
女性のホルモンレベルは、さまざまな理由により一生を通じて変化します。そして、ホルモンの変化は乳房の変化につながることがあります。妊娠中に生じるホルモンの変化は、後の乳癌発症リスクに影響を及ぼすようです。これまでの研究によって、妊娠や出産のような生殖イベントと乳癌リスクとの関連性が明らかになってきました。米国国立癌研究所(NCI)は現在、妊娠した場合と同じような乳癌予防効果が得られる方法を確立し、それを効果的な予防戦略に応用しようと試みる研究に資金を提供しています。

乳癌を予防する妊娠関連の因子
妊娠に関連する因子のいくつかは、女性が後年乳癌を発症する確率を減らすことが知られています。
 第1子出産年齢が若ければ若いほど、生涯にわたって乳癌発症のリスクが下がる。
 35歳以降に第1子を出産した女性は、20歳以前に第1子を出産した女性に比べ約2倍の乳癌発症リスクがある。
 30歳前後に第1子を出産した女性の乳癌発症のリスクは、出産経験のない女性とほぼ同程度である。
 2児以上の出産経験は乳癌発症の確率を下げる。とくに若年における2児以上の出産によって、生涯にわたって乳癌発症のリスクが下がる。
 完全に解明されているわけではないが、妊娠中に発症することがある子かん(癇)前症は子における乳癌リスクの減少と関連があると示唆する研究があり、また母体の乳癌を予防するとの報告もある。
 妊娠後、長期間(たとえば1年またはそれ以上)授乳することにより、乳癌リスクが少しではあるがさらに下がる。
(略)
米国国立癌研究所(NCI)全訳

   

授乳は高リスクの閉経前女性の乳癌リスクを低下させる

授乳が、第一度近親者に乳癌患者を持つ閉経前女性の乳癌リスクを低下させることをNurses’ Health Study IIに参加している研究者らが報告した。この研究の詳細はArchives of Internal Medicine誌の8月10/24日号に掲載された。[1]

女性は早く出産するほど、多く子供を産むほど、乳癌の発症率は低くなると長い間考えられてきた。この見解は、米国などの先進国と、女性が若年齢で出産し一般的に子供の数が多い発展途上国における乳癌発生率の差を説明するために用いられてきた。乳癌の女性は、乳癌を持たない女性より出産回数が少ないことは、これまでの研究によって明らかにされてきた。また乳癌は、授乳歴のある女性より授乳歴のない女性においてより多くみられている。乳癌リスクは、出産ごとに7%低くなることに加えて、授乳期間が一年増えるごとに4.3%低くなると推定されている。もし家族の人数の減少や授乳期間の短縮がなければ、乳癌の発症率は今日の半分になっていただろうと推測されている。
(略)

今回の研究により60075人の経産婦における乳癌発生率が評価された。このグループ中では閉経前乳癌は608人であった。授乳歴のある女性は閉経前乳癌の発症リスクが25%低下した。授乳期間については、傾向は見られなかった。第一度近親者に乳癌患者を持ち授乳歴のある女性においては、授乳歴のない女性と比較して閉経前乳癌の発生リスクが59%低下した。乳癌の発症リスクが高くない女性においては、授乳と閉経前乳癌の発生リスクには関連が見られなかった。全訳


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