「ズッコケ三人組」シリーズの完結に際して組まれた特集の中の論文です。
村中は、「ズッコケ三人組」シリーズが出版されていた二十五年(正確には二十六年)の間に、日本の子どもたちを取り巻く環境に次のような大きな変化が生まれたことを指摘しています。
1.男の子の三人組が成立しなくなった(三人という微妙な人間関係の緊張に耐えられずに、大勢でなんとなく群れているか、つるむとしても一対一の関係しか成立しない)としています。また、連載開始時はどこにでもいそうな普通な男の子たち(それぞれまんが的にキャラクターが誇張されていますが)が、今の学級ではおそらく問題児童として排斥されてしまうだろうとも指摘しています。
2.身体知(体で学んだこと)を得る環境が、現実の学校文化では影を潜めているとしています。
3.三人組をはぐくんだ商店街を始めとした地域社会が崩壊していることをあげています。
また、作品世界と実世界がずれていくにつれて、それを埋めるために三人組が状況説明のために饒舌になっていったことも指摘しています。
「ズッコケ三人組」シリーズのような長期間続いた「時間循環型」の「遍歴物語」が、実社会とずれていってしまうのは宿命のようなものですが、テレビアニメでは、「さざえさん」を始めとして、「ちびまる子ちゃん」、「ドラエモン」、「クレヨンしんちゃん」などの時間循環型(一部新キャラクターの誕生など時間を進行させている部分もありますが)の長寿番組が、視聴率は以前ほどでなくても健在です。
おそらくそこには、作り手側と受け手側の状況の違いがあるからでしょう。
作り手側の状況では、「ズッコケ三人組」シリーズは那須正幹という個人が作った世界なので、連載開始時は三十代だった那須が六十代になって子ども世代と遊離してしまったのに対して、アニメは集団制作なので作り手はどんどん新陳代謝できます(「サザエさん」も「ドラエモン」も「クレヨンしんちゃん」も原作者は亡くなっていますが、アニメの人気には直接的には影響していません)。
受け手側の事情としては、「ズッコケ三人組」シリーズのメインターゲットである小中学生(特に男の子)が自分たちと違う世界の主人公たちに興味が持てなくなったのでしょう(彼らにはこの世界へのノスタルジーはありません。また、男の子たちが読書自体をしなくなったことも原因でしょう。彼らの物語消費に対する欲求は、携帯ゲームやトレーディングカードなどが満たしています)。
それに比べて、「サザエさん」のようなアニメの視聴者は大人が中心で、その世界にノスタルジーと安らぎを感じているのだと思われます(子どもが視聴する場合は、大人と一緒に親たちの昔話を聞く感覚で見ているのかもしれません)。
このように、子どもの読者を対象とした普通の日常世界をベース(空想世界も出てきますが)に描いた「時間循環型」の「遍歴物語」は今後は成立しにくくなっていて、「ゾロリ」などのようにエンターテインメント性を強めた空想世界を描かないと人気は勝ち取れなくなっているようです。
村中は、「ズッコケ三人組」シリーズが出版されていた二十五年(正確には二十六年)の間に、日本の子どもたちを取り巻く環境に次のような大きな変化が生まれたことを指摘しています。
1.男の子の三人組が成立しなくなった(三人という微妙な人間関係の緊張に耐えられずに、大勢でなんとなく群れているか、つるむとしても一対一の関係しか成立しない)としています。また、連載開始時はどこにでもいそうな普通な男の子たち(それぞれまんが的にキャラクターが誇張されていますが)が、今の学級ではおそらく問題児童として排斥されてしまうだろうとも指摘しています。
2.身体知(体で学んだこと)を得る環境が、現実の学校文化では影を潜めているとしています。
3.三人組をはぐくんだ商店街を始めとした地域社会が崩壊していることをあげています。
また、作品世界と実世界がずれていくにつれて、それを埋めるために三人組が状況説明のために饒舌になっていったことも指摘しています。
「ズッコケ三人組」シリーズのような長期間続いた「時間循環型」の「遍歴物語」が、実社会とずれていってしまうのは宿命のようなものですが、テレビアニメでは、「さざえさん」を始めとして、「ちびまる子ちゃん」、「ドラエモン」、「クレヨンしんちゃん」などの時間循環型(一部新キャラクターの誕生など時間を進行させている部分もありますが)の長寿番組が、視聴率は以前ほどでなくても健在です。
おそらくそこには、作り手側と受け手側の状況の違いがあるからでしょう。
作り手側の状況では、「ズッコケ三人組」シリーズは那須正幹という個人が作った世界なので、連載開始時は三十代だった那須が六十代になって子ども世代と遊離してしまったのに対して、アニメは集団制作なので作り手はどんどん新陳代謝できます(「サザエさん」も「ドラエモン」も「クレヨンしんちゃん」も原作者は亡くなっていますが、アニメの人気には直接的には影響していません)。
受け手側の事情としては、「ズッコケ三人組」シリーズのメインターゲットである小中学生(特に男の子)が自分たちと違う世界の主人公たちに興味が持てなくなったのでしょう(彼らにはこの世界へのノスタルジーはありません。また、男の子たちが読書自体をしなくなったことも原因でしょう。彼らの物語消費に対する欲求は、携帯ゲームやトレーディングカードなどが満たしています)。
それに比べて、「サザエさん」のようなアニメの視聴者は大人が中心で、その世界にノスタルジーと安らぎを感じているのだと思われます(子どもが視聴する場合は、大人と一緒に親たちの昔話を聞く感覚で見ているのかもしれません)。
このように、子どもの読者を対象とした普通の日常世界をベース(空想世界も出てきますが)に描いた「時間循環型」の「遍歴物語」は今後は成立しにくくなっていて、「ゾロリ」などのようにエンターテインメント性を強めた空想世界を描かないと人気は勝ち取れなくなっているようです。
![]() | 日本児童文学 2013年 08月号 [雑誌] |
クリエーター情報なし | |
小峰書店 |