現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

日本児童文学2012 3-4月号「特集:南吉を書こう」

2017-09-20 10:35:38 | 参考文献
 日本児童文学は隔月刊の日本児童文学者協会の機関誌ですが、この号の紙面構成には大きな疑問があります。
 この号は、新見南吉の生誕百周年を記念し、南吉へのオマージュを書いた作品を募集した特集をメインにした号です。
 日本児童文学では、最近、宮沢賢治に関して同様なことをしたことがありました。
 まず、こういった特集を「日本児童文学」でやることには、根本的に疑問があります。
 本来ならば、賢治や南吉ゆかりの団体や自治体などが行うべき事業でしょう。
 あえて特集をやるならば、「日本児童文学」では、賢治や南吉の現時点での評価を検証すべきだと思います。
 また、オマージュを載せるならば、第一線のプロの書き手(会員にたくさんいます)に依頼した作品を載せてほしいものです。
 この特集に多くのページを割いたこともあり、アマチュアが書いた文章が雑誌全体を占める割合が非常に高くなって、全体的に同人誌のようになってしまいました。
 以下に、この号の全体の紙面構成を紹介します。
表紙:いわむらかずおの牛の親子の絵で特に特集とは無関係。
表紙裏:岩崎書店の広告と作品募集。
p1:ミネルヴァ書房の広告。
p2-3:目次
p4:榎本事務所の広告と添削受講者募集
p5:中表紙
p6:小峰書店の広告
p6-59:特集の入選作品と選考評など(間に、広告、「日本児童文学」の予告、児文協が主宰する「児童文学学校」、「実作通信講座」、「創作教室」の告知などが挿入されています)
p60-71「飛び出せ、新人」というコーナーで、「投稿作品賞」の応募作品一編とそれに対する講評二編(間に、広告、児文協が主催する「井戸端会議」、「絵本学校」の告知が挿入されています)
p72-76:「児童文学のとなり」「こども目」「こんにちは!街の本屋です」などの紹介文(間に、児文協が主催する絵本テキスト大賞の告知が挿入されています)
p78-99:「創作時評」「翻訳時評」「絵本時評」「ブックラック」「同人誌評」などの短評(間に、広告、児文協とポプラ社が共同主宰する「新・童話の海」の原稿募集が挿入されています)
p100-102:追悼文
p103:児文協が主催する「子どものための感動ノンフィクション大賞」一次選考結果発表
p104-107:児文協が主催する「児童文学学校」の推薦作品
p108-109:児文協が主催する「長編児童文学新人賞」の告知
p110-113:投稿作品賞選評と告知
p114-115:新人登場
p116:紙面批評
p117-128:連載(間に広告が挿入されています)
p118-130:子どもと本の情報(日本児童文学者協会が主催する「創作講座」の告知が挿入されています)
p131:執筆者プロフィール
p132:編集後記
裏表紙裏:「家の光」作品募集の広告
裏表紙:新見南吉生誕百年記念事業の広告
 以上のように、連載を除くと、プロの書いた創作や評論は皆無といっていいほどないです。
 確かに、「日本児童文学」は日本児童文学者協会の機関誌なのですから、会員間の情報交換も必要でしょう。
 また、財政が苦しいでしょうから、広告や主催している事業も大事な収入源でしょう。
 新しい会員や読者を獲得する必要もあります。
 しかし、それだからといって、アマチュアの書いた文章や広告や告知や短評で誌面の大半を埋めてしまっては、1050円のお金を払って買おうという一般読者は限られてしまうのではないでしょうか。
 もっとも、「日本児童文学」を書店で見かけなくなってからだいぶ時間が経ちましたから、今は会員もしくはこれから会員になろうという予備軍の定期購読者が大半なのでしょうかもしれませんが。
 それにしても、1970年代から1980年代の、そうそうたる作家や研究者たちが刺激的な論文や創作を執筆して、月刊で普通の書店にも並んでいたころの「日本児童文学」を思うと、隔世の感があります。

日本児童文学 2012年 04月号 [雑誌]
クリエーター情報なし
小峰書店







 
 

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