泣くまいと思っていたのに、今回もラストで涙を抑えることができませんでした。
知的障害にも負けず、明るく生きているお姉さん。
差別的な視線でお姉さんを見るクラスメートたちとの間で、複雑な思いを抱える弟である主人公。
お姉さんの自立を妨げないように配慮しながら、温かく見守る両親。
お姉さんは、作業所で一か月働いた初めての給料(わずか三千円です)で、レストランで家族にご馳走しようとします。
もちろん三千円だけでは料金には足りないのですが、おとうさんがさりげなく給料袋の中身を三万円にすり替えておきます。
ラストで、主人公は、学校の課題の作文に、「ぼくのお姉さんは、障害者です」と、堂々と書きます。
ここには、40年前の障害者が置かれていた境遇(驚くほどの低賃金、障害者を守るのは家族などの少数の理解者だけなど)がはっきりと書かれています。
作者の大きな長所は、障害者に対する周囲の差別も包み隠さずにストレートに表現することだと思います。
それから40年近くがたち、障害者の働く環境も少しは改善されましたし、周囲の理解もしだいに広がっています。
しかし、今なお障害者に対する差別や無理解、そして自立を妨げる障壁は、まだまだ克服されていません。
そういった現状において、この「現代児童文学」の古典を、各地の読書感想文コンクールの課題図書にして、できるだけ多くの子どもたちが読むことには現在でも大きな意義があると思います。
ぼくのお姉さん (偕成社文庫) | |
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