著者の中学生の息子(父親はアイルランド人)が通うイギリス南部の中学校を舞台にしたエッセイ集です。
著者が元底辺中学校(市内で最下位のランクだったが、近年学業などに力を入れて中位ぐらいまでランクアップしている)と呼ぶ学校は、彼女たちが住む元公営住宅地(もともと住んでいた低所得者や無職の人たちだけでなく、現在は払下げ(豪華なリフォームをします)でミドルクラスの人たちも住むようになり、まだらになっている)にあり、そこで暮らす子どもたちやその保護者たち(白人だけでなく移民も多く、地域的にLGBTQの人たちも多い)や教員たち、貧困問題に取り組む人たちなどを描いています。
主人公である著者の息子は非常にいい子で、いろいろな問題(彼は小学校は市内第一位ランクのカソリックの公立校に通っていたので、新しい環境には面食らうことが多かったのです)に直面しても、懸命に取り組んでいるのが好感が持てます。
ただし、著者の書き方は、ややその息子を自慢していることが感じられて、鼻につくこともあります。
著者の立場は、福祉大国を実現していたかつての労働党寄りで、緊縮財政で弱者を切り捨てている保守党政権には批判的です。
その指摘には共感できる点も多いのですが、過剰な福祉によって、働かずに子どもだけ産んで社会に面倒を見させている層に対する批判はあいまいで説得力に欠けるようです。