この文豪の名作にコメントするつもりはありません。
ただこの作品を久しぶりに読んだのは、キンドル(電子書籍リーダー、その記事を参照してください)で無料で簡単に読めたからです。
キンドルストアの無料本のベストセラーの上位には常にランクされていますから、かなりの人数の人びとがあらためてこの作品に触れる機会を得たのでしょう。
この作品に書かれている世界は、明治天皇が崩御されて明治が終わるころですから百年以上前のことです。
そのころに書かれた作品が、風俗の違いこそあれ、今でも大きな違和感なく読めるのは、漱石の平明な文章によるところが大きいものの、書かれている内容に普遍性があるからでしょう。
こういった近代文学の古典を読むと、文学の力というものを改めて感じることができます。
これらの古典的な作品を身近に味わえるところに、電子書籍による読書という新しい風俗のひとつの意義があるのではないでしょうか。
その点では、一部の例外を除くと、日本の児童文学の代表作の電子化は遅々として進んでいません。
一方、英語圏の児童文学の代表作は、ほとんどが電子書籍になっていて、無料もしくは安価で手に入ります。
日本の児童書の出版社が、児童文学作品を耐久財ではなく消費財と考えていることが、この点からも分かります。
また、この作品の主人公や先生のような生き方(高等遊民)には、初めて読んだ中学生の時に強く憧れて、高校生や大学生の時にささやかながら実体験(当時の「高等遊民」の遊びは、最先端の演劇、映画、音楽、美術、文学などを追及することでした)しました。
会社に勤めてからは、48歳までにHappy Retirementして高等遊民に戻りたいと考えていましたが、子どもが生まれたのが遅かったせいもあって実際にはだいぶ遅れてしまいました。
今はようやくそういったものを追求できるのですが、現在ではかつての高等遊民の遊びの各分野とも、商業主義がひどく進んでしまっているので、それらの最新のものは追わずに古典や名作に親しむ方が無難なようです。
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