現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

立花隆「まえがき」サル学の現在所収

2018-08-25 18:38:46 | 参考文献
「アニマ」誌の1986年10月号から1990年3月号まで連載された霊長類学者との連続対談をまとめて、1991年8月に出版されたこの本の「まえがき」です。
 なぜ、この時期に「サル学」なのかについて述べています。
 まず、なぜサルに学ばなければならないかの理由として、「人間とは何か」という根源的な問題を問う時に、近接する存在であるサルを学ぶことにより、「人間」だけが持つ特性(「人間性」といってもいいかもしれません)を明らかにできることをあげています。
 また、サル学は日本で急速に発達した学問であり、常に世界をリードしている数少ない学問分野でもあります。
 さらに、日本は先進国の中で唯一、サル(ニホンザルもしくはそれの亜種であるヤクザル)が広く野生のまま分布しており、研究もしやすいし、日本人もサルに対して親しみがあることも挙げられています。
 1950年代から1960年代には、サル学は一般の人たちにも関心が高く、それらの人に対する啓蒙書も多数発行されていました。
 そうしたサル学ブームを再燃させようと意気込んで本書は書かれたのですが、残念ながらこの本が出版されてから30年近くがたち、一般の人たちのサル学への関心はますます薄くなっています。
 私は学生のころから動物学に関心があるので、今でも私の蔵書の中では、文学関係を除くとサル学を初めとした動物学の本が一番多いです。
 また、私自身も、学問をする意味合いは、「人間とは何か」、「人類や社会にどうしたら貢献できるか」といった根本的な問いかけが必要だと考えています。
 私の学生時代の専門は電子工学なのですが、今でもはっきり覚えていますが、大学でもオリエンテーションにおいて、「電子通信(当時はその大学では電子工学と通信工学が一緒の科でした)で社会に貢献できるアイデアを問われました。
 当時は、今よりも交通事故が深刻な時代でしたので、私は、「自動車は電子化した免許書カードを挿入しなければ運転できず、そのカードには道路上のあちこちに備えられている電子装置によって自動的に計測された違反行為が送信されて書き込まれ、一定のポイントになると運転できなくなる交通システム」を提案しました。
 残念ながらこうした交通システムは実現していませんが、現在の通信や電子記録の技術ならば、国がやる気になれば実現可能だと思っています(自動車会社や警察などの利権が絡んでいるので、実際には難しいでしょう)。
 こうした学問の理念は、実用万能主義の傾向におわれて、その後少なくとも日本では衰退している事は否めません。
 しかし、児童文学においても、「子どもとは何か」「子どものためにどのように貢献するか」という問いかけなしに作品を書くことには、少なくとも私には何の価値も見出せません。


サル学の現在 (上) (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

永遠の僕たち

2018-08-25 08:33:34 | 映画
 交通事故で両親を亡くし、自分も三か月間昏睡状態だった主人公の少年は、まわりの人々に心を閉ざして、彼にだけ見える幽霊(日本人の特攻隊員で、加瀬亮が演じています)とだけ交流しています。
 高校もドロップアウトし、見知らぬ人の告別式に参加して回っている彼は、ある日、脳腫瘍の再発で余命三か月と宣告されている少女に出会います。
 こんな設定の悲恋を、美少年(ヘンリー・ホッパー、「イージー・ライダー」のデニス・ホッパーの息子)と美少女(ミア・ワシコウスカ、「アリス・イン・ワンダーランド」のアリス役)が演じるのですから、日本のアニメや実写版でもゴマンとありそうな映画ですが、さすがにマイナー映画の巨匠であるガス・ヴァン・サント監督の作品だけあって、セリフが詩的で映像もシャレています。
 お約束の展開とラストですが、児童文学でいえばヤングアダルト物を書くときの参考にはなるでしょう。

永遠の僕たち [DVD]
クリエーター情報なし
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする