現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

宮沢賢治「どんぐりと山猫」注文の多い料理店所収

2018-08-05 10:03:34 | 作品論
 賢治の、最初にして最後の作品集の巻頭作です。
 ご存じのように、賢治の作品は、時として難解なこともあるのですが、この作品は非常にオーソドックスな童話です。
 子ども読者の大好きなくり返しの手法を多用(山猫の行方を尋ねる時やどんぐりたちがそれぞれの主張を繰り返すところ)して読者の興味を引きつけていますし、不思議な世界への通路(ファンタジーを成立させる一つの要件で、この作品では馬車です)もきちんと用意されています。
 しかし、今までの童話と大きく違う点は、賢治独特の鋭い自然への観察を軽々と優れた詩の言葉へ変えてしまう表現力や弱者(馬車別当やどんぐりたち)への労わりやサポートの表明などです。
 百年近く前(1921年9月19日)の作品ですので、差別的な用語も散見されますが、そんなことはどうでもいいのです。
 そういった言葉遣いだけに気を使って、内容が多様な人々への配慮に欠けた作品のなんと多いことか。
 常に弱者の側に立つ。
 その姿勢こそ、昔も今も児童文学者に一番求められるものなのです。
 子どももまた弱者であることは、新聞やテレビやネットを繰り返し賑わせている事件だけでなく、みなさんご自身の体験からも明らかなことだと思います。
 世界中の子どもたちは、等しく幸せになる権利を持って生まれてきています。
 それを踏みにじる大人たちがいるかぎり、児童文学者は常に子ども側の立場でいるべきです。
 賢治のこの作品集も、その立場を繰り返し明確にしています。
 ところで、私はこの作品の冒頭の山猫からのはがき(実際は彼の馬車別当が書いています)を読むたびに、受け取った一郎と同様にうれしくてうれしくてたまらなくなります(年を取ってしまったので、一郎のようにうちじゅうとんだりはねたりはできませんが)。
「かねた一郎さま 九月十九日
 あなたは、ごきげんよろしいほで、けっこです。
 あした、めんどなさいばんしますから、おいで
 んなさい。とびどぐもたないでください。
                 山ねこ 拝」
 いつか自分にもこんなはがきが来ないかとずっと願っていますが、初めて読んでから五十年以上たちますが、その後の一郎と同様に、残念ながらまだ一度も受け取っていません。

注文の多い料理店 (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社



 



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黒川博行「破門」

2018-08-05 08:17:54 | 参考文献
 2014年上半期の直木賞を取った作品です。
 1997年にスタートした「疫病神」シリーズの第五作です。
 カタギの主人公と極道の相棒のはちゃめちゃストーリーは、17年にわたって書き続けられてきましたが、この作品の最後に題名通りに極道が組を破門されて完結したようだったのですが、直木賞を取って売れ行きが戻ったので、その後も連載は続いて、第六作、第七作も出版されています。
 シリーズの作品には出来不出来があり、かならずしも「破門」が一番いい作品ではありませんが、これまでに何度も直木賞の受賞を逃しているので、シリーズ全体の評価としておくられたのでしょう。
 また、直木賞の審査員が、作者と同世代の人間が増えたのもプラスに働いたでしょう。
 「疫病神」シリーズは、カタギと極道にコンビを組ませることによって、合法と非合法のバランスが取れていて、単なるやくざ物の作品になっていないところが魅力になっています。
 しかし、第五作になるとさすがにマンネリ化は目立ちますし、作品の中での時間経過(主人公は3-4才しか年を取っていません)と17年という実時間の経過のギャップも目立ちます。
 そこで、作者は登場人物の年齢設定はそのままに、強引に作品世界の時間を2011年の大阪府暴力団排除条例が施行後にスキップさせています。
 このあたりはエンターテインメント作品ならではのご都合主義なのですが、極道(その周辺にいるカタギの主人公も)のシノギ(金儲け手段の事です)が厳しくなったことを作品の背景とするとともに、シリーズを終了させるための伏線なのでしょう。
 もっとも、直木賞を受賞したことで人気も売上げも大幅に上がったので、作者はこのコンビを復活させました。
 かの有名なシャーロック・ホームズも、読者の熱烈な要望で、ライヘンバッハの滝つぼから生還しています。

破門 (単行本)
クリエーター情報なし
KADOKAWA/角川書店
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8月4日(土)のつぶやき

2018-08-05 06:23:53 | ツイッター
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