現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

安藤美紀夫「路地裏の虹」でんでんむしの競馬所収

2018-07-20 09:11:11 | 作品論
 学校でトイレに行くことを先生に言えずに何度も漏らしてしまい、担任の女の先生が怖くてとうとう学校へ行けなくなってしまった一年生の女の子の話です。
 みんなが三年生になった時に担任の先生が代わったと聞き、思いきってまた学校へ行きますが、新しい一年生の教室へ行けずに、つい奉安殿(天皇の写真が収められていて、誰も立ち入りしてはならず塀の中にも入ってはいけないことになっています)の塀の中でおしっこをしてしまいます。
 校長を初めとして学校中が大騒ぎになり、女の子は二度と学校へ行けなくなってしまいました。
 そんな主人公が、千人針(ほそながい白のさらしの布に、千人の女の人が赤い小さな糸玉ひとつづつ縫ってあげる物で、これをおなかに巻いていると敵の弾に当たらないという信仰があって、出征する兵士に贈ります)を知って、自分自身は汚らわしいと縫わせてもらえなかったのに、兵隊さんが弾に当たって死んだらかわいそうと、自分で作ることにします。
 彼女にとっては恐ろしい場所である露地の外へも勇気をふるって出かけて、千人針を頼んで歩くのですが、誰も相手にしてくれません。
 千人針を頼んで歩くうちに、雨にぬれたり水たまりに突き飛ばされたりして、すっかり濡れてしまった女の子は、肺炎に罹って死んでしまいます。
 彼女が死んだ朝、露地には美しい冬の虹がかかりました。
 「露地裏の虹」というタイトルが何を指しているのかは、もうお分かりのことでしょう。

 
でんでんむしの競馬 (少年少女創作文学)
クリエーター情報なし
偕成社
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