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現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

地下室のメロディ

2021-12-20 18:17:09 | 映画

 1963年のフランス映画です。
 老ギャングが引退する最後の仕事に、若い相棒と組んでカジノの金庫を狙います。
 白黒映画ですし特撮の手法も非常に古いのですが、バックに流れるしゃれた音楽と粋な会話やテンポのいい演出は、今見ても少しも古びていません。
 当時もフランスの新旧二大映画スターの共演が話題になりましたが、ジャン・ギャバンの渋い演技とアラン・ドロンの若々しい魅力が全編に溢れています。
 特に、プールの中に隠したカバンが開いてしまい、中のお札が次々に浮き上がってプール一面に広がる有名なラストシーンは、一攫千金を狙った二人のはかなさを象徴していて鮮やかです。

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イン・ハー・シューズ

2021-12-19 15:24:06 | 映画

 2005年公開のアメリカ映画です。

 外見も性格も対照的な姉妹が、破滅的なトラブルも乗り越えて、題名通り(「彼女の立場に立って」という意味です)にお互いを理解しあって再びかたく結び付くまでを描いています。

 トニ・コレットが優秀な弁護士だが外見には自信がない(やや太っている、地味など)姉を、キャメロン・ディアスがスタイルもルックスも魅力的だけど性格や生活面で問題の多い(ふしだら、盗癖、だらしがない、仕事が続かない、学習障害(文字を読んだり計算するのが苦手)など)妹を熱演しています。

 二人には、幼い頃に母が死んで以来音信不通だった(父親と継母が手紙などをブロックしていました)祖母(シャーリー・マックレーンがチャーミングなおばあちゃんを演じています)がいることが判明して、彼女たちの再生に力を貸してくれます。

 かなり御都合主義(姉には彼女を理解してくれる結婚相手が登場します。妹には祖母の物心両面の援助に加えて、彼女が学習障害を克服することを手助けしてくれる元教授の老人が現れます)なハッピーエンドの映画ですが、出演者が演技達者ばかりなので、安心して見られます。

 

 

 

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お名前はアドルフ?

2021-12-18 09:19:35 | 映画

 2018年公開のドイツ映画です。

 大学教授夫妻の自宅で開かれた家族(妻の弟夫婦、妻が兄弟同然に育った男性)の食事会で、弟が生まれてくる子供にアドルフ(もちろん、ヒトラーのファースト・ネームでドイツでは禁句のようです)と名付けると宣言したことから、一見仲良いと思われた一族に大騒動が巻き起こります。

 発端はジョークだったのですが、そこから本気での罵りあいや暴力が始まり、それぞれが持っていた本音や偏見(ゲイ、マザコン、ジェンダー、家事の分担、学歴、インテリ、大学教授夫妻の子供たちの名前、吝嗇、過去のペット殺し、年の差恋愛、妊娠、喫煙、飲酒、親の偏愛、タブーなど)が暴露されていきます。

 かなりきわどいブラック・コメディなのですが、現代のドイツの一端が窺い知れて興味深いです。

 

 

 

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ブラス!

2021-12-15 17:31:40 | 映画

 1996年公開のイギリス・アメリカ合同映画です。

 サッチャー政権下のイギリスを舞台に、合理化のために閉山される炭鉱の坑夫たちによるプラスバンドを描いています。

 閉山をめぐる労働闘争、貧困、失業、坑夫特有の肺病、冷酷な会社の対応、政府批判などの社会問題が、これでもかというぐらいに盛り込まれた社会派ドラマです。

 しかし、その一方で、ブラスバンドへの情熱も豊富な演奏シーンとともに、しっかりと描かれています。

 最後は、数々の困難を乗り越えてロンドンのアルバート・ホールにおける全国大会で優勝し、観衆にむかって堂々と自分たちの主張を述べるシーンが感動的です。

 それにしても、出演者たちが、まるで坑夫そのものように猥雑でたくましいのには感心させられました。

 

 

 

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ハート・ロッカー

2021-12-12 20:28:16 | 映画

 2009年のアカデミー賞で、俳優関連を除いた主要部門を独占した作品です。
 イラク戦争における爆弾処理班を描いていて、人間ドラマよりも戦場シーンの迫真性を追求しています。
 ハンディカメラを多用して画面も粗く、ドキュメンタリータッチで撮影されています。
 アカデミー賞受賞後に、戦場のシーンの正確さに欠けていると批判されましたが、それもこの作品がリアリティを追及しているが故であって、例えば「地獄の黙示録」の様にドラマを重視した作品だったら、そこまで要求されなかったでしょう。
 児童文学の世界でも、描写を重視するか物語を重視するかで書き方は異なってくるので、前者の場合はよりリアリティを要求されるでしょう。

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アイ・アム・サム

2021-12-12 17:40:31 | 映画

 知的障害のある主人公の、七歳になった娘の親権をめぐる物語です。
 主人公と娘、ひょんなことから弁護を引き受けることになった有能な女性弁護士と息子の関係を通して、親子とは何かを考えさせられます。
 女の子に対する愛情を持ち主人公にも理解のある里親の設定など、ご都合主義な点はありますが、芸術映画ではないのでそれもOKでしょう。
 深刻になりそうなテーマを、ユーモアあふれるエンターテインメントまとめ上げた監督の手腕と、主人公やその友達の知的障碍者を見事に演じた俳優陣に感心させられました。

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ヒトラーに盗られたうさぎ

2021-12-12 13:53:40 | 映画

 2019年のドイツ映画です。

 ドイツの絵本作家のジュデュス・カーの自伝的小説を映画化したものです。

 ナチスドイツ下におけるユダヤ人家族の物語というと、戦争中の弾圧や収容所の問題がよく映画化されますが、この映画はそれよりも前のナチスが政権を奪取した1933年から1934年にかけての物語です(児童文学的に言うと、ケストナーの「飛ぶ教室」(関連する記事を参照してください)が書かれた頃です)。

 生まれ育ったドイツ(ベルリン)からスイス、フランス(パリ)、イギリス(ロンドン)と、迫害や貧困を逃れるために流転するユダヤ人家族の生活を、10才ぐらいの主人公の女の子の目を通して描かれています。

 ナチスに批判的だった演劇評論家の父は、逮捕されるのを避けて(実際にその後指名手配されて懸賞金がかけられます)スイスに亡命し、ひそかに家族(母、中学生ぐらいの兄、主人公)を呼び寄せます。

 しかし、そこでは収入を得る道がなくて、家族はパリへ移住します。

 そこでの主人公たちの困難な生活(スイスではドイツ語が通じましたが、パリでは子供たちは全く知らないフランス語を使わなければなりません)が、この作品ではメインに描かれています(主人公はフランス語のハンディキャップに負けずに、作文で賞金を得るまでになりますし、兄は成績で一番になります)。

 しかし、ここでも父が十分な収入を得られなかったために、父が書いた戯曲が売れたロンドンへ引っ越すところでこの物語は終わります(今度は、英語を覚えなければなりません)。

 いろいろな困難の中で、時にはぶつかり合いながらも、たくましく生きていく主人公や家族の姿が、過度に感傷的にならずに淡々と描かれているのが好感が持てました。

 また、当時の風物を再現した映像が素晴らしく、作品にリアリティを与えています。

 変わったタイトルは、ベルリンの実家から逃れるときに荷物が制限されたために、主人公が一緒に連れて来られず、その後、当局に没収されてしまった愛するピンクのうさぎのぬいぐるみからきています。

 

 

 

 

 

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バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3

2021-11-30 17:06:29 | 映画




 人気SF映画三部作の完結編で、前の二作がTo be Continuedで終わるのに対して、この作品はThe Endとなっていることからして、スピルバーグは初めからこれを完結編とすことを決めていたようです。
 そういった意味では、作品全体の辻褄合わせ的なものはあるものの、三部作の中では第一作に次いで完成度が高いです。
 シリーズ全体での時間移動は、1985年(第一作の公開年)→1955年→1985年→2015年→1985年→1885年→1985年と行われたことになります。
 タイトルを考えると、第一作と第三作が重要で、第二作はつなぎのような感じです。
 作品的にも、撮影当時の未来を描いた第二作はどこかぎこちがなく、すでに過去である1955年や1885年を描いた第一作と第三作のほうが、細部にしゃれた伏線を貼るのが得意なスピルバーグの良さが出ています。
 やはり、純粋SFはルーカスの方が得意なようです。
 それにしても、1985年はもちろん、当時は未来だった2015年も過去になったことには、「ブレードランナー2049」の記事にも書きましたが、感慨深いものがあります。
 

 

 

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バック・トゥ・ザ・フューチャー

2021-11-30 17:03:47 | 映画

 1985年公開のアメリカ映画です。

 当時、スピルバーグ監督が連発していた傑作映画のひとつです。

 他の記事にも書きましたが、このころは、スピルバーグか、コッポラか、ルーカスの映画を見ていれば、まず間違いはありませんでした。

 タイムマシーン物ですが、それに関するリアリティはあまりありません。

 でも、そんなことはどうでもいいのです。

 圧倒的なテンポのよさと、たくさんちりばめられた伏線の回収が、小気味よくて、何度見てもスカッとします。

 マイケル・J・フォックスの軽快な演技も懐かしく見られますし、日本にとっては青春時代と言っていい80年代の楽しさを象徴する作品のひとつでしょう(アメリカ映画ですが)。

 

 

 

 

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探偵物語

2021-11-24 17:26:35 | 映画

 1983年公開の日本映画です。

 赤川次郎原作の軽いタッチの推理物で、ストーリー自体は偶然の多用や御都合主義の他愛ないものです。

 この映画の魅力は、なんといっても主演の二人によるものでしょう。

 薬師丸ひろ子はとにかくかわいい女子大生(本人も実際に女子大生でした)にはぴったりですし、松田優作の探偵はなんといってもかっこよく決まっています。

 そんな二人を見るだけでも、一見の価値はあります。

 

 

 

 

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スウィング・ガールズ

2021-11-11 18:02:07 | 映画

 2004年公開の日本映画です。

 ひょんなことからビッグ・バンド・ジャズをやることになった、補習クラスの落ちこぼれ女子高校生たちの奮闘を、コメディ・タッチで描いています。

 当時は無名でオーディションで選ばれた、上野樹里、貫地谷しほり、本仮屋ユイカ、平岡祐太らが、一躍売れっ子になりました。

 「ウォーターボーイズ」で大ヒットした矢口史靖監督の作品で、同じように若い無名な俳優たちを鍛え(演技だけでなくこの映画ではジャズ演奏を、前作ではシンクロナイズド・スイミングを)ながら、一級の娯楽映画を作り上げていく手腕はさすがのものがあります。

 この映画のために猛練習した(ほとんどのメンバーが素人だった)彼女たちの演奏も、聴くだけの価値があります。

 また、この映画ではブレイクしなかったけれど、その後有名になった、高橋一生、江口のりこ、佐藤二朗たちの無名時代の姿を見つける楽しみもあります。

 

 

 

 

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チア☆ダン

2021-11-11 17:33:51 | 映画

 広瀬すず主演のアイドル映画です。
 映画の系列でいえば、「スウィングガール」や「フラガール」の流れをくむものですが、出来は遠く及びません。
 映画のストーリーそのものよりも、広瀬すずをいかに魅力的に見せるかに主眼が置かれているようです。
 チアダンス部のメンバーや顧問の教師(天海祐季が演じています)それぞれに、チアダンス部に関わる動機のようものを与えているのですが、描き方が非常に表面的で浅く、「フラガール」の登場人物たちのような内的必然性はまるで感じられません。
 また、メンバーたちが上達していく過程の描き方も、「スウィングガール」や「ウォーターボーイズ」のようなユーモアや工夫がまるでなく、なんで彼女たちがそんなにうまくなったのかまるでわかりません。
 一応ダンス映画なので、本来ならばダンスシーンが迫力を持って描かれなければいけないのですが、国内大会は、初出場のまるで駄目だった時を除くと、出演前の掛け声(「元気に素直に美しく」で、明らかに宝塚の「清く正しく美しく」のパクリです)のシーンと結果発表のみで、踊るシーンはまったく省かれていて、ラストの全米大会だけはさすがに省けないので主要メンバー以外に踊れる人たちを入れて、なんとか描いていました。
 勘ぐるに、低予算短期間撮影の映画なので、主要登場メンバーのダンスのトレーニングに時間を十分に取れない(特に主役の広瀬すずは非常に多忙なので、この映画のためにそんなに時間はさけないでしょう)ために、ボロが出ないようにうまくごまかしたのでしょう。

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うなぎ

2021-11-08 16:00:39 | 映画

 1997年公開の日本映画です。

 カンヌ映画祭で最高賞にあたるパルム・ドールを受賞し、監督の今村昌平にとっては「楢山節考」についで二度目の受賞です。

 不倫した妻を衝動的に刺殺して、十年の刑になった男が主人公です。

 入獄して八年目に仮出所して、保護司の観察のもと、片田舎の川べりで、刑務所で身につけた理容店を始めます。

 人間不信に陥っている主人公は、まわりの人たちには心を開かずに、飼っているウナギとだけ話しています。

 そんな彼が、睡眠薬自殺を図った女(妻とよく似ている)を助けたのをきっかけに、次第に周囲に心を開いていく姿を描いています。

 周囲の人たち(保護司の住職夫妻、近所の船大工、常連になるチンピラなど)がいい人ばかりで、話としてはうますぎる感じですが、妊娠していた自殺未遂の女と結ばれるなどのハッピーエンドで、見心地は悪くありません。

 

 

 

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はちどり

2021-11-05 16:21:14 | 映画

 2018年公開の韓国映画です。

 90年代のソウルを舞台に、14才の多感な少女の日々を、克明に描いています。

 多忙で不仲な両親(父親は不倫をしているようです)、過大な期待(ソウル大学合格)をかけられたストレスから主人公に暴力を振るう兄、落ちこぼれて恋人と遊びほうけている姉に囲まれて、主人公は家庭で居場所がありません。

 学校でも落ちこぼれていて、他校の親友と遊んだり、ボーイフレンドと一緒に過ごしたり、彼女に憧れる後輩とデートしたりして、日々をやり過ごしています。

 それらの関係も、すべて裏切られて終わってしまいます。

 親友には、一緒に万引きして捕まったときに裏切られます。

 ボーイフレンドには、浮気をされたり、親に反対されて別れさせられたりします。

 後輩には、心変わりをされます。

 主人公は、そうしたストレスのせいか、耳の下にしこりができて手術を受けます。

 そんな時、風変わりな塾の女性の先生と出会って、主人公は彼女だけには心を開くようになります。

 しかし、その先生も事故で亡くなってしまい、けっきょくは一人で人生を切り開いていかなければならなくなります。

 そういった意味ではかなりかわいそうなラストなのですが、そうした経験を経て、主人公が成長したように感じられるのがせめてもの救いです。

 

 

 

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スリー・ビルボード

2021-11-04 14:39:05 | 映画

 2017年公開のアメリカ映画です。
 レイプされ、さらに焼き殺された娘の事件の捜査が進展しないことに業を煮やした母親が、町外れの寂れた街道にある三枚の広告看板(これがタイトルになっています)に、自費で警察を糾弾する意見広告を出します。
 この看板を巡って町は緊張状態になりますが、それに拍車をかけるように広告において名指しで批判された警察署長が自殺します。
 末期の膵臓がんを患っていたことが自殺の理由で看板とは無関係なのですが、それによって看板を巡る対立はさらに激化します。
 アメリカの地方の町の荒廃、人種差別、警察の腐敗と怠惰、州を超えての犯罪に対する無力化、プアーホワイト(白人貧困層)の疲弊、野放しの銃器、ドメスティック・バイオレンス、家庭崩壊、教育崩壊など、現代のアメリカの抱える恥部を、これでもかこれでもかと鋭くえぐっていく作品です。
 主役の母親を演じたフランシス・マクドーマンドが、「ファーゴ」(その記事を参照してください)に続いて二度目のアカデミー主演女優賞を獲得しました。
 前作のユーモアあふれる女性警察署長役から一転して、一切妥協しない氷のように頑なな女性を好演しています。
 また、怠惰な警官役のサム・ロックウェルが、若いプアーホワイトたちの現状と絶望の典型を熱演してアカデミー助演男優賞を受賞しました。




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