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「ORKの口伝」はフィクションです
実在する全てと無関係です

ORKの口伝124

2010-01-17 | フィクション
この文章は全てフィクションです
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「オレヴァホ・ラフ・クノダイスキーの口伝124」

ダマスカスオイスター

日本では言わずと知れた冬の味覚、
世界で広く好まれている貝類カキの一種である。
この種の何よりの特徴は、
海水中の鉄分をその他のカキ類よりも、
より多く吸収し殻にしてしまうことである。

名前の由来は、
その殻の切れ味の鋭さから来た物である。
共生細菌の作用により、
吸収された海水中の鉄分は硫化鉄の形態に科学的に変化し、
殻として固定されるのである。
その時殻の縁は激しい海流で研ぎ澄まされ、
非常に鋭い切れ味を帯びる。
またその殻の縁が年輪のように何重にも重なり、
不規則に波打った美しい模様を形成する。
この模様と切れ味が、
古来より有名な刃物の産地及びその製造技法になぞらえて、
この名が付けられたのである。

先ほども述べたように、
このカキは非常に激しい潮の流れを好む為、
現在も養殖技術は確立されておらず、
一般の人が手に入れることはまず無い。
しかし、
手に入らなくても全く困ることは無いのである。
なぜならばこのカキは、
非常に不味いのである。
なんといってもこのカキの特徴である鉄分吸着能力の、
一番の要である共生細菌による作用のせいで、
硫黄臭いのである。
よく卵の腐った匂いに例えられるあの臭いが、
食べた瞬間口の中から鼻腔内に充満し、
非常に苦痛である。
この臭いは生食の時だけではなく、
火を通した時も変わらない為、
どのような調理法もまったくの徒労に終わる。
食用としてはまるで価値のないカキである。

ただし、
その他の分野からの注目度は非常に高い。
海水から鉄を生産できる可能性があるのである。
現在確認されているこの細菌が共生する生物は、
このダマスカスオイスターと、
スケーリーフットと呼ばれる巻貝の一種だけである。
しかしこの先この細菌が共生でき、
尚且つ人間が簡単に養殖できる生物が発見されれば、
鉄資源についてはこの先枯渇の心配がなくなると推測される。
またこのような人間に都合のいい生物が発見されない時の為に、
同時並行的にダマスカスオイスターの養殖も試みられている。

このカキの養殖において一番の困難は、
その生息に適した激しい海流を常時発生させることである。
人工的に発生させるには、
非常に大きなエネルギーが必要なのは言うまでも無く、
コスト面とエコロジーの面で問題が多い。
かといって自然の激しい海流を利用して、
このカキの養殖を行うのもまた至難の業である。
このように問題は山のように多いが、
今後の資源生産に希望を持てる研究と思われるのである。

ちなみにこのカキを食べてみたが、
否!
これは人間の食料にあらずである。
たとえるならば、
口の中に広がる硫黄温泉の数百倍の硫黄臭が強烈過ぎるので、
全く誰にもお勧めできないのである。
とほほである。
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この文章は全てフィクションです。
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