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世間むかしいまし物語「山と獣」

2015-01-18 | フィクション
このお話はフィクションです
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世間むかしいまし物語
「山と獣」

  むかしむかしなのか
いまのことなのか
よくわからない時のお話

 あるところに山がありました
山と言ってもそれ程高くなく
どちらかといえば丘といった方がいいくらい
なだらかで穏やかな山でしか

 山の上には沢山の実のなる木があって
沢山の獣たちの食べ物になっていました

 山は自分の上で
木に実がたくさんなって
それを食べて獣たちが生きているのを
とても嬉しく思っていました

 ある時突然
山は削られ始めました
山の上に生えていた木はどんどん切り倒され
あっという間に丸坊主になってしまいました

 隠れる場所を奪われ
食べるものを奪われ
獣たちは四方に離れて行きました

 丸坊主にされ削られ
平らに均された山の上には
どんどんと家が建って人が住み始めました
山は何も言うことが出来ないので
ただただ静かにそれらを受け入れました

 やがて家が立ち並び
大勢の人が住み始めると
とても賑やかになりました
しかし山は感じていました
木があって獣がいた時とは
賑やかさの質がちがうなぁ

木があって獣がいた時よりも
聞こえる音はずっと大きいけれども
生き物の音とは違ってしっくりときません
それでも山は受け入れました
寂しく思いながらも
受け入れました



 一方
人に山を追われた獣たちは
食べるものを探して回りました
探して回ったところ
古くから人が住んでいて
人が食べるものを作っている田畑を見つけ
それらを食べて生き延びました
人が食べる物は栄養がとてもあって
獣たちはとても喜び
沢山子供を作って増えていきました

 古くから住んでいた人達は困りました
なんとか獣を近づけないように頑張り
なんとか自分達の食べるものを作りました
しかし
増えた獣たちが食べる量がとても多く
獣たちが来る前のようには
食べるものを作ることが出来なくなりました
仕方が無いので
今まで他のものと交換していた分を
自分達で食べました



 山を削って住み始めた人達は
食べものと交換する色々な物を作っていました
キラキラした飾りの付いた服
ピカピカと光る靴
賑やかな歌と踊り
等などそれはそれは面白いものでした

 しかしあるとき気が付きました
こんなに綺麗で面白いものなのに
最近欲しがる人が少なくなったなぁ
と…。



 それから何年かした時
とうとう誰も
綺麗で面白いものと食べ物を
交換してくれる人が物凄く少なくなり
いつもお腹を減らしているようになりました

 その人達はぺこぺこのお腹を抱えて
こんなに綺麗で面白いものを
どうして皆欲しがらなくなったのかなぁ…
と思い続けましたとさ

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このお話はフィクションです


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