靴ボタン・コンプレックス

スノーボール　改訂新板　上　アリス・シュローダー　Ｐ５５
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そういうスピーチに熱心になるあまり、バフェットに言わせると「自己陶酔」して、壇上から引きずりおろさなければならなくなることがあるという。
　だが、マンガーはアマチュア科学者、建築家を自負していて、アインシュタイン、ダーウィン、合理的な思考の習慣、サンタバーバラの分譲地における理想的な住宅の間隔についてよどみなく解説するいっぽうで、自分がある程度時間をかけて学んでいる事柄から大きく離れた領域へは手をひろげないように用心している。ハーバード・ロースクール時代の同級生がいう”靴ボタン・コンプレックス”に陥るのを怖れているからだ。
「同級生の父親は、毎日おなじ人たちと通勤していた」マンガーはいう。「通勤仲間のひとりが靴ボタンの市場を独占した──ほんとうに小さい市場だが、それをぜんぶ握った。その男は、ありとあらゆる問題について、偉そうな態度で論じるようになった。靴ボタンの市場を制覇したことで、あらゆることの権威になったと思い込んだわけだ。ウォーレンも私も、そういう態度をとるのは大きな間違いだとつねに思っている」
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