輝く日の宮 (講談社文庫)丸谷 才一講談社このアイテムの詳細を見る |
丸谷 才一が小説家だったとは知らなかったのだが、輝く日の宮つながりで…。
「芭蕉はなぜ東北へ行ったのか」「『源氏物語』に『輝く日の宮』という巻はあったか。あったとすればなぜ失われたのか」などについて、杉安佐子の口を借りて著者の自論を開陳する。その点は面白い。
違和感があるのは、人間が描けていないこと。特に主人公杉安佐子に対して甘いと言わざるを得ない。
早熟だったかもしれないが、育っていない。
著者自身の理想像であるのか? 紫式部はこのような人間だと思われているのか?
本書の構成が源氏物語をなぞられているようであり、ヒロインが紫式部の生まれ変わりのようであり、時代の記録のようであり…複層的な効果をねらったものらしい。
小説にしなければよかったのではないかな。