『最先端の美、欲望、風俗を写し取った天才たちのドラマ。
世界に誇れる数多の作品を残した、江戸の浮世絵師たち。だが、当時の彼らの地位は低かった。
波瀾万丈な15人の、作品と生きざま。
江戸文化の華、浮世絵。今でこそ芸術的評価も高いが、当時は庶民の娯楽。絵師の給料は安く、副業として描くのは当たり前、春画で生活をしのいだ者も多い。それでも描きたい絵師たちは、売れるために、「風俗の最先端」を追い求めた。その影響力は大きく、幕府から処罰を受けた絵師もいる。本書では、ブランディングに成功した師宣、万物を描き尽くした超人・北斎、体臭も漂うような妖艶美人画を描いた英泉など、大胆に15人を選出。華やかな浮世絵の背後で繰り広げられた、絵師たちのスキャンダラスな人間ドラマを描く。
*菱川師宣* 春画を、堂々の署名入りで刊行した
*勝川春章* 相撲絵の生みの親で、大名層にもファンを抱えた
*喜多川歌麿*人気のあまり目をつけられ、タブーの作品で手鎖五十日の実刑を受けた
*歌川豊国* 人気絵師ゆえの、醜聞・美聞多し
*渓斎英泉* 妖艶すぎる美人画で有名、私生活も放蕩無頼 』
副題が「俗とアートを究めた15人」
15人となると、ちょっと出て来ない。
ちゃんとした専門家が"下世話に"新書に書いてくださっているので、実に的確で、楽しい。
個々の評論を読むことはあっても、時代順の流れを把握していなかったので、目からウロコ多々。
軽く事典になりそう。
もう少し絵版が多かったらいうことはないのだが、それは望みすぎというものだろう。
15人は、師宣、政信、祐信、春信、重政、春章、清長、歌麿、鳥文斎栄之、写楽、豊国、北斎、英泉、広重、国芳。
内藤 正人氏
1963年愛知県名古屋市生まれ。出光美術館主任学芸員を経て、慶應義塾大学文学部教授・慶應義塾大学アート・センター所長。博士(美学)。専門は日本美術史。著書に『浮世絵の歴史』[共著](美術出版社)、『もっと知りたい歌川広重』(東京美術)、『浮世絵再発見』『江戸名所図屏風』(ともに小学館)、『勝川春章と天明期の浮世絵美人画』(東京大学出版会)など。