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『パリの老舗パン店の主人リオネル・ポワラーヌはヘリコプター事故である一通のメモを遺して急逝した。それは法王に宛てた「グルマンディーズを七つの罪源から赦免を乞う嘆願書」。「グルマンディーズ(美食愛・食道楽)は大食いや貪り食うことではなく、人類が築きあげた崇高な芸術で、ともに分かち合う美徳の精神である」とするものだった。彼の遺志に賛同する有名シェフ、作家、歴史家、法律家、医学者、修道士、寄席芸人、F1レーサー、代議士、デザイナーなどが結集、それぞれの美食への思いをエスプリ光る言葉で語る珠玉の書簡集。
※グルマンディーズは大食い・食通という意味でも使用されることもあるが、19世紀最大の美食家サヴァランは美食愛・食道楽と定義している。 』
いやはや、さすがフランス人ですね。
大真面目にグルマンディーズを7つの大罪のひとつから救うためにこんな努力を・・・
7つの大罪とは?
初期キリスト教の神学の教えで高慢、物欲、色欲、嫉妬、憤怒、怠惰、貪食(大食)の罪。本書ではその中の貪食(大食)をめぐり議論が展開します。当初構成されていた八つの基幹罪から変化した経緯をポントスのエウァグリオス、トマス・アクィナスなど聖人たちの逸話から解説、よく耳にしながらも見逃しがちなキリスト教思想の一端に触れられます。
嘆願の相手の法王さまは、つい先日亡くなられたヨハネ = パウロ二世。本書では前法王が出身地ポーランド・バドビツェでのシュークリームの思い出を語られたり、神学生時代に大食の罪を犯したことを告白したという伝聞が記述されています。また有志たちに謁見された際、直接、嘆願書を受け取られ「パンは祝福を与えてくれるものです」と話されたという心温まるエピソードが明らかになります。
「よく味を知る者少なきなり(孔子)」「食は天なり(吉田兼好)」「海鼠を食えるものは親鸞の再来にして河豚を喫する者は日蓮の分身なり(漱石)」など洋の東西を問わず、人類の美食に対する熱意は、同じなのかもしれませんね。
なお本書は2005年3月「2004年度グルマン・ワールド・クックブック賞」特別賞が授与されました。(因みにこのときの大賞は かの料理研究家栗原はるみ氏)