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「知の巨人」逝く

2011年07月29日 23時19分49秒 | 日記・エッセイ・コラム
SF作家の小松左京氏が亡くなった。

実は代表作である『日本沈没』『復活の日』は読んでいない。長編は古いものは読んでいると思うが、あまり記憶に残っていない。むしろ短編の方を数多く読んだ。最も印象に残る作品も短編の「夜が明けたら」だ。

筒井康隆、星新一とともに日本SF創生の立役者である。ブルドーザーに譬えられ、SFという魅力的なジャンルの地ならしをした。

私にとって小松左京という存在は、SFの体現者のようなものだった。

人の内面や情を描くのが文学だとしたら、文学で描かれない世界はなんと広いことか。20世紀後半、社会の変化と科学の日常への浸透により、人の抱える問題はもっともっと多様になっていった。しかし、ほとんどの文学者はそれに立ち向かおうとはしていなかった。
複雑化した世界を捉えるには相応の知の蓄積が必要となる。この時代にそれだけの知を蓄積し、それを分かりやすく表現できるという点に関しては他の追随を許さなかった。

私にとってのSFは、小松左京の描くSFだった。

科学であれ、社会であれ、あるいは未知の力であれ、それが引き起こす影響の程を知識の裏付けと合理性でもって描き出す。一種の思考実験こそがSFの大きな魅力だったし、それをエンタテイメントとして描く力を持っていたのが小松左京だった。

趣味としての博覧強記ではなく、実践としての博覧強記である最後の存在だったのかもしれない。単に作家としてだけでなく、万博のプロデュースなどその知を社会に還元した。SFに対しても数多くの作品を残しただけでなく、様々な場を通してSFをアピールし続けた。

小松左京のようなSF作家をいま求めるのは酷と分かっていても、それでも求めてしまうのは小松左京がいたからだ。

現役作家の突然の訃報とはまた異なる衝撃を受けた。心からご冥福をお祈りしたい。


2011.07.28 つぶやきし言の葉

2011年07月29日 02時14分12秒 | Twitter