環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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「治療的視点」と「予防的視点」:摩擦の少ない適正技術を

2007-06-12 06:43:23 | Weblog


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ここで、「治療的視点」と「予防的視点」の決定的な相違を検証しておきましょう。

日本では1967年に「公害対策基本法」ができました。2年後の69年に、スウェーデンでは「環境保護法」ができました。今から考えると、この2つの法律はほとんど同じ時期に生まれた環境分野の基本法ですが、法律の名前からしても前者は治療的視点で、後者は予防的視点でつくられていることが明らかです。視点の相違により、法律の対象となる項目の範囲に相違が出てきます。日本の法律は一般に対象を狭くしておいて、何か新しい問題が起こるたびに対象項目を追加するリスト方式ですが、スウェーデンの法律は日本とは対照的に最初から大きな網をかぶせておきます。

今日は、労働環境の分野で「治療的視点」と「予防的視点」を考えてみます。スウェーデンは予防を重視してきた国ですので、新しい生産技術が登場したときにはまず、それを生産部門や事務部門に導入したら作業者と機械の接点でさまざまな摩擦が起こらないだろうか、と考えます。このような考え方の繰り返しを通して「スウェーデン社会に適した技術」が選ばれ、社会に定着してきたのです。
 
30数年前にマイクロ・エレクトロニクス(いまでいうIT機器)の雇用への影響が、ILOなどの国際機関で議論されたとき、日本をはじめ多くの先進工業国の関心は、コンピュータやロボットが雇用の機会を奪うかどうか、という点でした。そんななかで、スウェーデンの主な関心は、これらの技術が作業の身体や心理にどのような影響を及ぼすか、という点であったことは、特筆に値します。
 
日本の産業界ではこれまでつねに、「競争」とか「効率化」という価値観を優先してきましたので、競争力があり効率化が図れると考えられる生産技術、たとえば、コンピュータとか、ロボットとか、あるいはそれらに支援された生産システムが開発され、市場に登場すると、ほとんど迷うことなく、それらの新鋭機器を生産現場に導入し、生産性の向上、効率化を図ろうとしてきました。事務部門も同様です。
 
また、私たち日本の消費者の行動様式も似たりよったりで、「便利さ」だとか「目新しさ」という価値観でつぎつぎに市場に投入される商品を購入し、廃棄し、さらに、新しいものを求めてきたのです。

その結果、「資源」「エネルギー」「廃棄物」に象徴される環境分野で新たな問題を引き起こしてきました。そしてまた、労働環境分野では、コンピュータやコンピュータに支援された生産システムやオフィス部門で、作業者との接点でさまざまな「医学的・心理的な摩擦(テクノストレス)」を生じています。 
 
このような状況が明らかになると、治療の必要性が生じて、医学の分野では治療医学、技術の分野では対策技術が、そして、両方の分野で診断技術、そのもとになる測定技術の研究開発の必要が生じ、それらの技術が発達することになります。

そして、癒し系ビジネス、スピリチュアルなビジネスが流行することになりますが、いずれも“治療的視点による対症療法”にすぎませんから、事態が好転するわけではありません。これが日本の現状でしょう。



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