べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

ゆびきり

2006年12月26日 22時13分33秒 | 慕情

あれはいつのことだったでしょう

たしか西の空が
真っ赤に熟した柿の実色に染まった
秋の夕暮れどきのことでしたね

そよ吹く風が運んで来たほのかな香りに
季節が移りゆくのをふと感じたような気がします

かたわらにたたずむあなたの横顔をそっと盗み見ると
愁いをおびたその長い睫毛が
かすかに濡れていたのをおぼえています

ぼくたちはなにも語らず
ただじっとたたずんでいましたね
ながいながいあいだ

どのくらいそうしていたでしょう
うす闇が静かにあたりを満たし
しだいにものの輪郭がほどけていくようでした

と、目のまえに
そっとさしだされたあなたの小指
そのしなやかでかぼそい指先に
ぼくはためらいがちにふれたのです

ものごとは思いのほか単純にできているようですね
なのに言葉にしようとすると
とたんにむずかしくなってしまうのです

ふたりが小指をからめあわせたちょうどその時
暮れゆく夕空の片隅に
小さな一番星が瞬いたのをおぼえていますか


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