べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

ある花冷えの日のこと

2016年03月12日 21時31分21秒 | 慕情

伝えたいことがたくさんありました
でもなにも話せないまま
あなたのうしろをつかずはなれず
うつむきかげんに
ただただ歩いていたのです

あれは初めて心を染めた
十代最後のある春の日ことでした
前をゆくあなたの影に
だれにも気づかれぬよう
そっと寄り添ってみたのです

伝えたいことがたくさんあったのに
けれどなにも話せないまま
時間ばかりが過ぎていき
あなたの影に重なるように
ただただ歩いていたのです

そうあれはいまは遠く過ぎ去った
十代最後のある花冷えの日のことでした
あなたの背中を見つめていると
やがてやすらぎと悲しみがない交ぜになって
ますますなにも云えなくなったのです

あなたは気づいていましたか
それとも気づかぬふりを
してくれていたのですか
あなたは優し過ぎました
こんなわたしにさえ
あなたは優し過ぎたのです




★photo:Flynt★ ↓↓↓ ポチッっとね
にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ

べそかきアルルカンの“徒然読書日記” http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin
べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ” http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« École de Paris ~巴里の異邦人~ | トップ | そんなふうにしてぼくは »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

慕情」カテゴリの最新記事