べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

雨色のシャンソン

2007年01月10日 22時06分55秒 | 慕情

きょうラジオから
思いがけない曲が流れてきました
おそらくあなたは憶えていないでしょうね
あの物憂い雨の日の午後
ふたりで何をするでもなく
ただぼんやりと耳をかたむけていた歌のことを

その雨色をしたシャンソンは
青く澄んだ水のように少しずつ部屋を満たして
やがてぼくらは
深い湖の底に沈んでいったのです
あの日のぼくらは
まるで水底に寄りそって眠る貝殻のようでしたね

だれが歌う何という曲なのか
あの時はそんなことさえ気にもなりませんでした
ただ あなたと過ごしたつかの間の時間だけが
ぼくの存在を意味づけるすべてだったから

だれもが幸福を求めながら
幸せはけして
だれにも平等に訪れるものではないのですね
ぼくはそんなことさえ忘れていました

きょうラジオから
思いがけない曲が流れてきました
物憂い雨の日の午後
ふたりで何をするでもなく
ただぼんやりと耳をかたむけていたあの歌です
けれどもう ぼくのそばにあなたはいない
そして あの頃のぼくも
もうここにはいない



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