ひきだしの奥で眠りつづけた一冊のノート
あなたのことを書きはじめ
あなたのことを書きつくせないまま
日々の記憶はその年の秋で途絶えています
静かにはじまった物語りは
やがてひそやかに終幕を迎えたのでした
そうして残されたページは白いまま
人知れずいくつもの季節を息づいてきたのです
色あせたノートを手にすると
遠く過ぎ去った日々が
まるできのうのことのように想い出されます
あふれるものを書きつくせないもどかしさ
書きたいことはたくさんあったはずなのに
あなたへの想いを綴るには
言葉はあまりにもむなしいものでした
あれからぼくの目の前を
どれくらいの年月がむなしく通り過ぎていったことでしょう
それでもぼくは
いまだ終止符を打つことができないでいるのです
残された白いページが
いまもひっそりと息づいているのを知っているから