べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

立ちつくすキリン

2007年01月04日 20時49分20秒 | メルヘン

キリンがすっくと立っている
広大なサバンナの真ん中にたったひとり
キリンはすっくと突っ立っている
すっくと立ってキリンはひとり
ただただ遠くを見つめている
キリンは遠くを見つめながら
じつは途方に暮れているのだ
途方に暮れたキリンの視線の先には
はるか遠く地平線が横たわっていた
よく見ると地平線は緩やかにほんのり丸みをおびている
キリンには丸みをおびた地平線が不思議に思えてならなかった
なぜならキリンは
大地はどこまでも平坦なものだと信じていたから

キリンは緩やかに丸みをおびた地平線を眺めながら
ちょっと小首をかしげたくなったがそうはしなかった
だってキリンが首をかしげると
バランスをくずして転んでしまうから
そもそもキリンには小首なんてものはありはしない
だからキリンは長い首をさらに伸ばして
サバンナの真ん中にひとり突っ立ち
はるか遠くの地平線をじっと見つめて
ひたすら静かに途方に暮れているのだ

そうして何日か過ごすうち
キリンの頭の中にふとこんなふうな考えが浮かんできた
ひょっとすると大地は丸い球のようなものかもしれないな
キリンはそんなふうに思いを巡らしはするものの
やっぱり小首をかしげようとはしなかった
そのかわりさらにこんなふうに思いを深めていく
もしも大地が球のように丸いなら
僕らはどうして球から落っこちたりすてんと転んだりしないのだろう
サーカスで芸を仕込まれたわけでもないのに・・・・と

考えれば考えるほど思い悩めば悩むほど
謎はさらに深まるばかり
キリンはきょうも広大なサバンナの真ん中にすっくと突っ立ち
ただひとりじっと遠くを眺めていた
そうしてじっと遠くの地平線を見つめながら
キリンはますます深く
しみじみ途方に暮れていくのだった


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