陽が落ちて
いつのころからか雨が降りはじめたようです
閉ざされた部屋の中にいても
それは微かな気配でわかるのです
わたしは夜の雨が好き
屋根や地面を激しく打ちつける
そんなどしゃ降りの雨じゃなくて
まるで忍び泣きでもするような静かな雨が
そう ちょうど今宵の雨のように
カーテンを少し開いてみると
無数の雫がか細い銀の糸をひいて
冷たい夜の底に降りそそいでいます
窓の硝子をつたい落ちる雨粒たちは
くっついたり離れたりしながら
いったいなにを囁きあっているのでしょう
ためしにそっと耳をかたむけてみても
もちろんなにも聴こえはしない
こんな優しい雨の夜は
灯りを落としたほの暗い部屋の中を
きれいな音楽で満たしてあげたくなるのです
雨粒たちの機嫌をそこねぬよう
あるいはそっとなぐさめるように
ゆったりとしてやわらかくまろやかな
それでいて甘やかな
なんだかせつなくなるような
しっとりと美しく
深く胸に沁み入るように心地よい
寂しい雨音にお似合いの
とってもとてもmellowな曲を
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ひっそりと静まりかえった夜更けの街
砕け散ったビーズのような霧雨は
ゆくあてもなくさまよい歩くわたしの肌に
ひっそりまとわりついてくる
傘をさすほどのことはないけれど
まるで炭酸水の泡粒の飛沫の中にいるみたい
人影の絶えた通り
ぼんやりと闇に滲んだ街灯の薄あかり
濡れて艶めくアスファルト
凍えて立ちつくす街路樹
吹きだまりの枯葉と打ち捨てられた時間
モノクロームの戸惑い
繰り返し脳裏をよぎる不透明な旋律
覚醒する睡魔
色あせた唇に 蒼ざめた微笑
すり切れた想い 繕いきれないほころび
剥がれ落ちそうな感情
あきらめと憔悴
甘やかな絶望 ゆがんだ陶酔
麗しい傷痕と 芳しい静寂
こめかみに貼りついたほつれ毛
めまい
夜更けの街を漂いながら
探し求めてていたのは
わたしの居場所
そんなもの
どこにもありもしないのに
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