飛行中年

空を飛ぶことに薪ストーブ、そして、旅をこよなく愛する一人の中年のブログです。

ハンググライダー進化の歴史 11

2012-06-16 17:04:06 | ハング(hangglider)

今回は、日本のメーカーが唯一世界の頂点に立った、伝説の機体「エクセル」をご紹介します。

一通りの技術が開発された後、ハンググライダーはさらなる高性能を求めて、どんどん過激なセッティングの機体が現れてきました。

アメリカの「センサー」は、高速性をあげるため、セールを過激なまでに張り、クロスバーもずいぶん長くしてスパーのしなりも許さない設計をしていました。

そのような風潮の中で、どのメーカーも多かれ少なかれ、セールを張るためにスパーを固くするようになり、2重、3重とパイプを重ね始めました。

当時、今のようにステップダウンリーディングエッジ(後述)の技術がなかったため、スパーをしならせないようにするには、パイプを重ねるしかなかったのです。

そんな中で登場してきたのが「エクセル」だったのです。

Excel この機体は、とにかく重量も重かったですが、それ以上にロールのコントロールも重かったです。

今の人が乗ったら驚くでしょう!

グライダーをバンクさせるときも、体重移動だけではなかなか曲がらず、タイミングを合わせてプッシュアウト(押し出し)をいれることでようやく曲がりだしました。

しかし、一度このコントロールのコツをつかんでしまうと、重いスパーが功をなし、バンク中の安定性が抜群だったのです。

しかも、ピッチのコントロールも容易で、セールが張っている割には、低速でも翼端が粘り、サーマルのコアにからむのがとても楽だったと記憶しています。

この辺のハンドリングは、むしろ今のグライダーにはない感じでしょう。

そして、ひとたびグライドに入ると、今までになかった性能を見せてくれました。

008 これは私の記憶で書いたエクセルの翼型(バテン形状)ですが、一般的なハンググライダーは、上図のように翼の厚みの一番大きなところを比較的前の方に設定します。

これにより、ピッチの安定が良くなるのです。

しかし、エクセルの翼型は、その最大厚の位置が下図のようにずいぶん後ろにありました。

こうすることで、揚抗比を上げる、つまり、性能をよくすることが出来ますが、しかし、ピッチ安定は悪くなります。

エクセルは、あえて危険な方を選んで性能を上げていたのです。

そのためか、私が乗ったハングの中で、後にも先にもラフラインがVGオンの時はもちろん、VGオフの時まで張りっぱなしだったのは、唯一このエクセルだけです。(ラフラインについては、この連載の9回目を参照)

そうしないとピッチの安定が確保できなかったのでしょう。

だから当時、秀でた性能を持っていたのだと思います。

当時世界選手権で優勝した、モイスのGTRワールドビーターにも乗ったことがありますが、エクセルの方がはっきりと良く飛んだことを記憶しています。

そんな名機エクセルを操ったことで知られているパイロットは、Iノ上氏、それに、I嶋氏がいました。

特にI嶋氏は、このエクセルで伝説的な連勝を飾り、世界中のパイロットから注目を浴びたほどでした。

Iノ上氏は、現在JHFのホープページ作成などもされているそうです。

また、I嶋氏は、現在病気と闘われているそうです。

早く元気に回復してほしいと思います。

コメント (2)
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