飛行中年

空を飛ぶことに薪ストーブ、そして、旅をこよなく愛する一人の中年のブログです。

苦しまぎれの旋回理論 その9

2015-09-28 20:07:02 | ハング(hangglider)
翼の表面に突起があるとハンググライダーはノーコンになる…。

前回はそんな不可解なハンググライダーの現象をビロー失速説を使って説明してみましたが、突起とまではいかなくても、ハンググライダーは

前縁部分の表面の状態、具体的にはセールクロスの種類で、随分ハンドリングの軽さが違ってしまうものなのです。

たかがセールの種類が違うだけで?と、思われるかも知れませんが、確かに違いがでるのです…。

そして、このことについても「ビロー失速説」を使うと簡単に説明が出来てしまうんです…。


現在のマイラーセールは、ガラス繊維やカーボン繊維をクロスで編み込んで、それにフィルムコーティングを施したものが主流となっていま

す。

例として下のPX20セールや最近流行のテクノーラセールなどがありますが、これらは表面が細かな凹凸状

態となっており、この凹凸がゴルフボールのリンプルと同じように空気の流れの整流効果があるために、空気抵抗を少なく

してくれると言われています。



このセールの凹凸は大きな気流の剥離を防ぐことから、低速での翼の粘りをも良い効果をもたらしてくれ、実際失速速度を遅くしてくれます。

しかし…。



この凹凸のあるマイラーセールをハンググライダーの前縁に使用すると、コントロールが重くなってしまうんです…。


これは、アメリカのウイルスウイング社で生産されている「sport2」というグライダーでも同社がずっとこだわっていましたが、やはりこのメ

ーカーも前縁にマイラーセールを使うことを嫌っていましたが、最近ユーザーの声に押されてしまい同機のマイラーセール仕様を作り出

してしまいました。

かつてこのメーカーは上記のSPORT2の原型となるSPORTというグライダーを作っていましたが、このSPORTにはスタンダード、ハーフレース、フ

ルレースの三つのバージョンが存在していました。

このうちスタンダードとハーフレースを比較すると、その違いは前縁部分のセールクロスの違いのみで、スタンダードはノーマルダクロン、

ハーフレースは凹凸のあるプロフィールセールクロスが使用されていました。

つまり、SPORTのスタンダードは前縁部分に凹凸がなかったのです。

そして、この二種のグライダーはそのハンドリングに違いがあり、スタンダードの方が明らかに軽かったのです。

おそらくウイルスウイング社はその経験からSPORT2でも前縁部分に凹凸のあるマイラーセールを使いたがらなかったのでしょう。


それではなぜ、前縁部分に凹凸のあるマイラーセールを使うというコントロールが重くなるのか…。

その理由は極めて簡単なのです。

凹凸のあるマイラーセールは大きな気流の剥離を抑える効果があると申しました。

「ビロー失速説」では、旋回したい方の翼に部分的に失速が生じることで初めて旋回出来るという説…。



つまり、凹凸のあるマイラーセールを前縁部分に使うと、ビロー失速説でいうところの旋回に必要な部分失速をも抑えられてしま

う…。だからコントロールが重くなるのではないか…。


そう考えられるのです。


実は過去大変興味ある機体が存在していました。

フランス ラムエッティ社の作るコンペ機、たしかコンパクトからトップレスくらいにかけてだと記憶していますが、前縁部分の中央

付近、前回突起があるとノーコンになると申し上げたまさにその部分のみ凹凸のないノーマルダクロンを使用し、他の前縁部分は凹凸のあるマ

イラーセールにて空気抵抗の軽減と低速の粘りを狙ったと思える作り方をした機体がありました。

この機体、見事に私が唱えるビロー失速説を「そんなこと知ってたよ!」と言うように、コントロールの軽さに影響を及ぼすと思える本当中央

付近の前縁部分のみノーマルダクロンが使用されていました。

もしビロー失速説が当たっていたならば、これは大変理にかなった作り方をしていると言えるのです。




???

テブノさんは私がビロー失速説を持つ以前に、既に私と同じ考えを持たれていたのでしょうか???



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苦しまぎれの旋回理論 その8

2015-09-27 19:03:10 | ハング(hangglider)
今回は翼中央の上部に突起が出来てしまうとハンググライダーはノーコンになるというお話です。

これもとっても不思議な現象…。

ノーズコーンの後ろあたり。翼の中央の上部に突起がある場合、例えばよくあるのがルミラーが中で折れてしまっている場合など、わずか数ミ

リの突起があるだけでもハンググライダーはほとんどそのコントロール性を失ってしまいます。



突起が翼の上部にあると、大幅に揚力が落ちてしまうことは分かるのですが、ハンググライダーは場所が悪いとコントロールすら出来なくな

る…。

これが今までどうしても納得のいく説明ができなかったんです。

しかし、ビロー失速説が出来たおかげで、これも納得のいく説明ができるようになったんです…。


この現象は意外に知らない方が多いかもしれません。

翼中央の上部に突起があると、ハンググライダーはコントロール性を失ってしまいますが、ノーズコーンがはがれてバタバタしていたりしても

、やはりコントロールが出来なくなります。

簡単に体験してみたいならば、ルミラーポケットに100円ライターを一個入れてやれば、あなたはおそらく無事にランディング出来なくなると

おもいます。(ものすごく危険なので実際にはやらないで下さい。)




さて、それではなぜこのような現象が起こるのか…。

これをビロー失速説で説明してみます。

(というか、感の良い方はもうすでにお気づきと思いますが…。)


ビロー失速説は、曲がりたい方の翼の中央が部分的に失速状態になることにより旋回に入る…。という説です。



問題の翼中央の上部に突起があれば、もともとハンググライダーはその部分はほとんど失速角に近い状態で飛行しているのですから、突起を

きっかけに常時失速している状態に陥ってしまうはずです!

こうなると、もはやビロー失速説では旋回に必要なヨーの力がうまく得られなくなる…。

と、いう風に簡単に説明出来てしまうんです…。


このことは突起がある場合やノーズコーンがはがれた場合だけでなく、例えばマイラーセール機で雨粒が翼の表面についた時も同じ事がいえま

す。

雨粒そのものはとても小さなものですが、ハンググライダーの翼の中央はほぼ失速角になっていること、並びにビロー失速説が正解であるなら

ば、やはり気流の剥離のきっかけとなってコントロールが出来なくなって当然といえると思うのです…。

ちょっとここの部分は面白いと思いますので、次回は翼の表面の状態とビロー失速説を照らし合わせながらもう少し掘り下げて説明してみよう

とおもいます。。

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苦しまぎれの旋回理論 その7

2015-09-26 19:06:29 | ハング(hangglider)
新説「ビロー失速説」を使ってのハンググライダーの不思議な現象の説明の一番目は、「なぜビローが多すぎるとコントロールが重くなる

か?」でしたが、今回はその延長として「なぜ初級機はビローが大きく保てるか?」についてもビロー失速説で説明して

みたいと思います。


以前よりずっと疑問に思っていたのですが、コンペ機と初級機のビローの量を見ると明らかな違いがあります。

もちろん初級機の方がビローが大きく、短いスパンとその慣性重量の少なさも相まって、軽いコントロール性と旋回性を実現しています。

初級機、コンペ機のVGオフ時はそれぞれ最もハンドリングが良くなるビロー量が与えられているわけですが、じゃあどうして初級機のビローが

大きく保つことが出来るのか?そして、そのことが結果、軽いコントロール性が実現出来ているのではないか?という事を新説ビロー失速説で

説明してみましょう。


先ず初級機とコンペ機の一番の違いはと言うと「翼のアスペクトレシオ(縦横比)」に決定的な違いが見られます。

初級機がアスペクトレシオが低くボテ~とした形で、コンペ機はアスペクトレシオが高くスラッとしているのですが、実は

アスペクトレシオと翼の失速角には密接な関係があることをご存知でしょうか?


アスペクトレシオが低くボテ~とした形の翼は高い迎角でもなかなか失速に入りません。

対するアスペクトレシオの高いスラッとした翼は、迎角には敏感に反応し、浅い角度でも失速に入ってしまいます。

つまり、アスペクトレシオの低い初級機は、迎角が大きくても失速に入りにくく、アスペクトレシオの高いコンペ機は少ない迎角でも失速に

入ってしまうということが言えます。



ハンググライダーの場合、翼の中央部の迎角はビロー量で決まってしまいます。ビロー量が大きければ翼の中央部の迎角が大きくな

り、ビロー量が小さければ迎角が小さくなります。




このことを踏まえて考えると、初級機はアスペクトレシオが低いために失速に入りずらく、結果大きなビロー量でも翼の中央部分に失

速が起こりずらいと言えます。



大きなビロー量は、以前もご説明しましたが、後縁部分に大きな上反角効果をもたらし、このことはビロー失速説ではより顕著に曲が

りたい方の翼の部分失速を作り出すことができます。




つまり、このことがグライダーに、より顕著なヨーの動きを作り出すことにつながり、初級機は良好なハンドリングをもたらせてくれ

るのではないか?私はそう考えたのです。



コンペ機ではこの逆となり、アスペクトレシオが高いために失速に入りやすく、結果ビローをあまり持たせることが出来ないために、上図で解

説するところビローによる上反角効果も少なくなり、旋回に必要な部分失速が初級機のように起こらず、ハンドリングに悪影響をもたらせてい

るのではないか?

私はそんな考えを持っているのです。

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苦しまぎれの旋回理論 その6

2015-09-17 22:33:18 | ハング(hangglider)
今回からはいよいよ私のやりたい放題?ではありませんが、今まであったビローシフト説、後退角説に変わって新しく出てきた「ビロー失速

説」を使って、今までの説では説明できなかったハンググライダーの数々の不思議な飛行特性の説明に入っていきたいと思います。

正直、私自身もこの新しい「ビロー失速説」を本当に公表してよいものかどうか悩み、結局10年ほど考えてみました。

しかし、ビローシフト説、後退角説で説明出来なかったハンググライダーの飛行特性が、新説ビロー失速説を使うと全て説明するこ

とが出来てしまったのです!


それらが説明出来てなお、私は更にこの新説の公表に迷いました。

「いまさらハンググライダーの旋回理論を解き明かすことに意味があるのか?」

「現状の性能のままのハンググライダーで皆が楽しく飛んでいるのであれば、それで良いのではないか?」

と、公表することの意味について考えました。

でも、揚力が発生する理論が100年も間違って信じられていたことについても、ちゃんと最近訂正されましたから、いつまでも間違ったままの

理論を押し通すこともあまりよいことだとは思えません…。

本当のことを言えば、どなたか先に公表してほしかったのですが…。

こういうことって、最初に公表するとだいたいろくでもないとこになるんですよね!(苦笑)



前置きが長くなりましたが最初にも申し上げたように、今まで説明出来なかったハンググライダーの飛行特性の不可解だったところを、新説

「ビロー失速説」での説明を今回から数回に分けて進めていきます。


先ずは摩訶不思議だったビローの適正量…。ビローは多いほどコントロールが軽くなる…なんて思われている方も多いと思いますが、

多すぎるビローは逆にコントロールが重くなります。




つまり、ビロー量には適正値があって、通常講習機などは一番コントロールが軽くなりところでビロー量を止めますし、コンペ機も現在はVGを

オフにするとやはり同じように一番コントロールが軽くなるところになるよう設定されています。

ならば何故ビローが出すぎるとコントロールが重くなるのか…。

これがいままでの説では説明が出来なかったんです…。

しかし…

しかし、新説「ビロー失速説」ならば簡単に説明できます。

ビロー失速説によると、旋回したい方の翼の根元の後縁部分だけが局所的に失速してくれるのが一番コントロールが軽くなるはずです。

で、その状態を作りだすには、まさに微妙なビローの量が要求されるのです。



セールが緩みすぎてビローが大きすぎると、ノーズが上がってしまうためつばさの根元すべてが失速に入ってしまいます。

ビロー失速説は旋回したい方のみ失速に入ってこそ旋回出来るという説…。

両翼とも失速に入ってしまえば旋回出来ないと言えます。



また、反対にビローの量が少なすぎても迎角が少なくなるため、当然旋回に必要なビロー失速が得られず旋回に入れません。

ただし、ビローが少なくてもパイロットが体重移動を保ったままベースバーを押し出し速度を落としていけば、あるところで都合よく

旋回したい方の翼が先に失速に入り旋回出来るはずです。実はこのコントロール方法が、30年ほど昔のただセールを張りまくるだけの作りをし

ていたコンペ機のコントロールの仕方と見事に合致しているのです。

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苦しまぎれの旋回理論 その5

2015-09-13 17:48:39 | ハング(hangglider)
さてさて、前回より随分間があいてしまいましたが、最後までこの連載を続けたいと思います!

前回ではハンググライダーの旋回理由の新説「ビロー失速説」について詳しく述べさせていただきました。

そして、今まであったハンググライダーの旋回の定説「ビローシフト説」はやっぱりおかしいのでは?ということについてご説明しました。

今回はそれに続き、今まであったハンググライダーのもう一つの旋回説「後退角説」についても、前回と同じように新説「ビロー失速説」と絡

めながらご説明したいと思います。



先ず「後退角説」について分からない方は、この連載のその2をご参照ください。

そこにはハンググライダーがなぜ後退角で旋回している可能性があるのかが説明されていますが、早い話が、後退角で風見鶏効果が生

まれるから旋回できている!
ということでした。

しかし、ハンググライダーの実際の動きをこの後退角説で説明しようとした場合、

ウイングレットをつけると、何故か旋回が遅れる。

シングルサーフェイスなどの低速の旋回を見ると、後退角説では説明しきれないヨーの力が発生している。

ビローのないハンググライダーの模型を作って旋回させようとしても、うまく旋回しない。

などの不可解な動きが見られることをご説明しました。

その中から先ずはウイングレットをつけると旋回が遅れることから説明!



先ずはおさらい!

ハンググライダーが後退角説で旋回しているのであれば、ウイングレットを付けた場合、重心位置よりずっと後ろにウイングレットがあるので

すから旋回に入りやすくなる筈! なのに、実際は旋回が遅れてしまう…。というものでした。

つまり、

ハンググライダーは後退角の効果だけで旋回しているとは考えがたいのです。

そこで、今回の新説「ビロー失速説」でこの現象を説明した場合、

ハンググライダーは旋回初めの初期のビロー失速により軽いスピンに入り、内側の翼に抵抗が生まれるため、かえってウイングレットのような

垂直尾翼の効果があるものがあると旋回の邪魔になる…。

という考えが半ば強引ですが、しかし、言えなくはないというレベルくらいでは説明出来ると思います。

まあ、この部分はまだまだちょっと自信のないところですが…。

でも次!次のシングルサーフェイス機などの低速の旋回…。これはちょっと面白いと思います。

これは、シングルサーフェイス機などの低速の旋回などを見ると、わずかな横滑りであるのもかかわらずクルッと旋回してしまっています。

後退角説が正しければ、速度が速いほうが横滑りをしたときに強くヨーの力が出るはずなのに、実際には逆…。

ハンググライダーは速度が速いとなかなか旋回には入れず、ある程度速度が遅いほうが旋回に入り易いものですが…。

これがまさに新説「ビロー失速説」できれいに説明できると思うんです…。

つまり、ビロー失速説がもし正しければ、片翼の内側だけが都合よく失速するスピードが最もヨーの大きな力が得られて旋回し易くなる筈です。

で、シングルサーフェイス機の低速の旋回…は、まさにこれに当てはまっており、低速だからこそ旋回に必要な片翼の部分的な「失速」が得ら

れて旋回出来ている…。と説明出来るのではないでしょうか?



実際、ハンググライダーの旋回の実際を考えて見ると、シングルサーフェイス機に限らず全てのハンググライダーには旋回し易い

速度が存在しており、早すぎた場合、旋回に必要なヨーの力が不足して旋回半径が大きくなる傾向があります。


逆に低速過ぎた場合、翼が過剰に失速してしまうため、旋回外側の翼まで失速に入ってしまい都合の良いヨーの力が得られずうまく旋

回できない…。


このように説明出来ると私は思うのです…。

そして最後…。

ビローのないハンググライダーの模型を作って旋回させようとしてもうまく旋回できない…。

ですが、これもビロー失速説で説明出来ると思うのです…。

実際、三角のフレームにシートを張っただけの、いわゆる「ロガロ翼」の模型で適度にセールが緩んでビローが発生する模型ならばちゃん

と旋回します…。

つまり、上記の二者の違いはビローがあるかないかの違いだけだと私は思うのです…。



以上のように、私にはハンググライダーの旋回には、翼の部分的な失速が大きく関わっているとしか思えないのです。


次回は新説「ビロー失速説」を使って今まで説明できなかったハンググライダーの不思議な飛行特性を説明してみたいと思います!

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