今回は、もっともポピュラーなハンググライダーと言っていい機体をご紹介致します。
イタリアはイカロ社の「ラミナール」です。
この機体は登場して、もう20年近くになりますが、いまだに後継機が続々と登場している不屈の名作です。
最初、イカロ社はヨーロッパモイスとして登場し、当時本家のオーストラリアで生産していた「XS」のライセンス生産をしていましたが、自立した技術で新しい機体が作れる自信がついたため、独立してイカロ社を設立しました。
そして、最初に登場したのがこの「ラミナール」だったのです。
当時、フレームのスパーは適度なしなりがなければ良いハンググライダーは出来ない!と、思われていましたが、イカロ社は60ミリの7075アルミを使用した剛性の高いスパーを敢えて使用し、セールのつくりでたわみをもたせてハンドリングを出すという新しい発想のもとに作った機体でした。
その発想は見事に大正解で、現在のハンググライダーの作り方の基本となるものとなりました。
設計思想が正しかったため、その後細かな改良は加わったものの、大幅な改良の必要性がなかったため、そのまま現在までその名を引き継ぐものとなったのです。
最初に私がこの機体に乗った時の感想は、「ハンドリングが軽いのに、何でこんなに高速性能が高いのか!」そんな強烈な印象と感動がありました。
VGを引くと、今までにないくらいベースバーの位置が手前に移動し、加速力がグンと増します。
明らかにセールの張りが今までとは別次元の機体に仕上がっていました。
しかし、登場当時は新しい設計思想による弊害も若干発生し、セールの張り、弛みが今までの機体よりも大きかったため、ラフラインの設定が追いつかず、よくバテンの後端に弛んだラフラインが引っかかってしまうことが起こりました。(笑)
もちろん今のラミナールではそんなことは起こりませんが、時代の最先端を進んでいた機体だったため、そんなトラブルも予想は困難だったようです。
何はともあれ、このラミナールはその後キングポストレス機にも無理なく進化し、基本設計はそのままで今に至る、ハンググライダーの歴史の中で一番と言っていいほどの不屈の名作となったのです。