VGが付いたことにより、ハングの性能は更に向上しました。
しかし、それに伴い前回でもご説明したように、ピッチの安定が損なわれるようになりました。
これをうまく改善したのが、「ラフラインの長さの微調節」だったのです。
この時は、ラフラインは完全に弛み、翼には変化がありません。
しかし、VGをオンした場合を考えます。
VGオンということは、スパーが広がる。つまり、ノーズを中心に翼が広がるということです。
この場合、よく考えてください。
ラフラインが翼についている位置が、若干ですが遠くなることがお分かりいただけるでしょうか?
上図ではちょっと見にくいですが、aとa´の距離で表しています。
距離が離れるということは、ラフラインが張るということになります。
つまり、上図右下のようにバテンの後ろが吊り上げられ、リフレックス(反り返り)がつくことになり、ピッチ安定が向上するのです。
このように、ラフラインの長さを絶妙に調整し、VGオンの時にラフラインが張る長さに調整してあげると、VGオンの時もピッチ安定を保てるグライダーを作ることが出来るのです。
逆に言えば、それだけラフラインの長さは繊細なものであり、注意しなければならず、古いグライダー等でセールが縮んでしまった機体は、ラフラインが弛みっぱなしになってしまったものをよく見かけます。
このようなことを言うのもなんなんですが、私のように鈍感なテストパイロットでも、一度でも乗ったことのあるグライダーならば、ラフラインの長さが3ミリ変わっていたら、はっきりと分かると思います。
それだけVGをオンにしたときは、はっきりとラフラインの狂いが分かるものなのです。
そして、この時生まれたVGオンで翼を吊り上げ、ピッチ安定を保つようにする考え方は、そのまま現在のキングポストレスのグライダーでも、ラフラインはないものの翼の中の機構に採用され、今でも生かされているのです。