脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

奈良のフットボリスタ ~奈良にプロクラブを~⑥

2007年10月01日 | 脚で語る奈良のサッカー


 前日の大分戦の興奮冷めやらぬまま、深夜にプレミアとカルチョをTV観戦しながらも、眠い体にムチ打ってこの日は奈良県1部リーグを観戦しに吉野町運動公園へ。

 大和郡山から約1時間強。奈良と云えどもその広さは日頃実感できない。長年通い慣れた万博よりも遙かに遠い山中に吉野町運動公園はある。すぐ横には県内屈指のダム湖でも有名な津風呂湖がある。こんな所まで来たのは本当に久しぶりだ。
 到着した頃には雨足は強まっており、土砂降りといえる天候で、肌寒さを感じさせる気温も相まって正直サッカー観戦には非常に悪いコンディション。目の前には泥田と化した土のグラウンドがあった。

 この観戦機会の日のためにかねてから予備知識は勉強してきたつもりだ。奈良県1部リーグは現在12チームで構成されている。チームによって消化試合数のバラつきはあるものの、現在アトレティコというチームが首位を走っている。昨季は都南クラブが優勝という結果に終わった。この日は都祁村の奈良大学野外活動センターでその都南クラブの試合も行われていたが、現在2位のポルベニルカシハラと3位のソレステレージャ奈良2002が観たくて吉野をチョイスしたわけだ。
 
 午前10時から順次行われる3試合。個人的には2試合目のポルベニルカシハラVSTFCガロットスのゲームが注目だった。

①FC橿原 3-0 アトレティコ
 雨足が次第に強まる中、最悪のグラウンドコンディションの中でのゲーム。パスを繋ぐこともままならず、ロングボール頼みの試合になった。リスク返上で果敢に前に出たFC橿原が後半にたたみかけ、強豪アトレティコに完封勝利。グラウンドコンディションが良ければまた違う展開になっただろうが、雨の中大味な試合展開になった。

②ポルベニルカシハラ 3-0 TFCガロットス
 1戦目に続き、泥田と化したグラウンドが両チームを苦しめる。そしてラフプレーも多く見られた試合であった。しかし序盤から大きなコーチングの声と連帯感を前面に出したポルベニルが終始ゲームの主導権を握り、10番の選手を中心に後半足の止まったガロットスを攻め立てた。ポルベニルのチーム充実度が窺える。レフェリーがファウルの判定に甘く、ゲームをコントロールできていなかったが、終盤主将の8番を退場で欠いたガロットスと、前述の通り充実した内容のポルベニル両チームの集中力と結束力の差がスコアに出た。

③ソレステレージャ奈良2002 2-2 天理大学FC
 雨がほとんど止み、予想以上に水はけの良いグラウンド状態にも助けられてパスも繋がるようになり、最も見応えのある好ゲームとなった。攻守の切り替わりが早かったこのゲームは前半からペースを握る天理大FCが猛攻を仕掛け2点をリードしながら終盤に追いつかれる展開。ソレステレージャはGK20番がPKストップも含め、神がかったファインセーブを連発しながらも攻撃陣がその活躍に応えられず。天理大FCは堅実なパスワークで俊足のFW6番を中心に終始相手ゴールを脅かした。レフェリングも一貫性のある非常に好印象であった。

 雨の中、土のグラウンドということもあって非常に過酷な状況下であったが、皆が勝つために熱いゲームを繰り広げていた。「攻撃は最大の防御」というようにリスクを省みず、まずは前にボールを運び、ゴール前は必ずといっていいほど勝負に出る。悔やまれたのはこれが芝のフィールドであれば、もっと面白いゲームになっただろうということ。使用料の問題や県内におけるそういった環境の少なさを実感してしまう。この吉野運動公園グラウンドは8時間の使用でもわずか12,600円。確かに破格であるが、観衆に観てもらうためには明らかに不向きであるし、選手にとっても雨の中せめてパスを繋げるサッカーがしたいのは当然のことだろう。これが県内1部リーグの実情ということも痛烈に感じた一面である。
 しかしながら、技術的なことはさておき、何よりも感じたのはドロドロになりながらもひたむきにボールを追いかける姿はサッカーに対する情熱を強烈に体現していた。クセになりそうだ。観衆といえる人間は私1人だったが、確かにこの雨の中、吉野の山中に足を運ぶ者はそういない。だが、大の大人が泥だらけになりながら1つのボールを追いかけるその姿にこそフットボーラーとしての真理、つまりは純粋な情熱を垣間見ることができる。

 ますますこの奈良の地に今新たなサッカームーヴメントが必要であることを感じてならない1日であった。