脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

予定通りの監督交代劇

2007年10月30日 | 脚で語る欧州・海外


 実に筋書き通りの監督交代劇であった。
 
 25日のUEFA杯グループリーグ第1節でヘタフェに敗れたトッテナムのマルティン
・ヨル監督がトップチームのコーチを務めるクリス・ヒューストンと共に翌日解任された。
 それもそのはず、一昨年、昨年とトッテナムをUEFA杯出場圏内に導きながら、今季はプレミア11節を終えて1勝4分6敗とチームはとにかく勝てていない。まさに負のスパイラルに陥っていた。今季は様々なチームからラブコールが絶えないベルバトフを中心に主力の流出を最小限に留めながらも、ウェールズの若き至宝ガレス・ベイルやイングランドの将来のエース候補であるダレン・ベントを獲得するなど、数年先まで見据えた実直な補強をこなし、チャンピオンズリーグ出場圏内の4位以内が現実的な目標となっていた。

 その後任として、セビージャを辞任したファンデ・ラモス氏が27日にすかさず監督就任を決定。この監督交代は今季開幕時からすでに滑り出しが良くなかったトッテナムの状況を察して、早くから噂されていたものだ。
 タイミングとしては悪くないだろう。セビージャも今季はリーガで現在4勝4敗と昨季中盤からの勢いを持続できず、勝てていないと言っていい。ヨル監督が去ったトッテナムの後任はデベロップコーチのクライブ・アレン氏が暫定的に指揮を執ると予想されていたが、その噂もファンデ・ラモスという名監督の来英に1日で吹き飛んでしまった。

 UEFA杯2連覇、UEFAスーパーカップ、スペイン国王杯、スーペル・コパとこの2年間で5つものタイトルを獲得してきたファンデ・ラモス監督が絶不調極まりないスパーズをどう立て直すのかが非常に注目されるが、指揮官のモチベーションは「このスパーズのファンにはUEFA杯の対戦時から感動していた。このクラブの監督であるということは本当に誇り高い」と実に意欲満々の様子。ケガで離脱中の主将レドリー・キングの復帰が今後の新生スパーズの鍵を握りそうなのだが。

 しかし、よくセビージャもファンデ・ラモス監督の辞任を容認したものである。今となっては世界中のクラブから熱視線を送られる欧州屈指の人材工場へと発展を遂げたセビージャ。そのガードの堅さは実に有名で、今季を迎えるにあたっては、UEFA杯連覇の原動力となった主力もほとんど流出していない。チェルシーと相思相愛になっていたダニエル・アウベスの移籍をシーズン開幕ギリギリになっても結局は容認しなかったほどである。
 とにかくそのセビージャの後任には下部組織の監督を務め、選手時代も含め20年以上をセビージャに捧げているマヌエル・ヒメネス氏が就任する。ファンデ・ラモスの築いた王国をどこまで引っ張って行くことができるか。意外とチャンピオンズリーグの決勝トーナメントまで勝ち上がれればと個人的には期待してしまう。そうなればセビージャの選択も正しかったことになるのだが。

 あまりに筋書き通りの監督交代劇。両チームの今後に幸あれ。