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脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

愛称に近いクラブの名称と商標登録の壁

2007年11月16日 | 脚で語るJリーグ


 来季からのJリーグ参入を確定させているロッソ熊本が、チーム名をロアッソ熊本に変更する方向で固めているようだ。Jリーグクラブの名称には商標登録が必要であり、今回の熊本のケースはイタリア語で「赤」を意味する「ロッソ」が既に出版社などで登録されているものだという。
 
 これまでも現在Jリーグで戦うクラブの幾つかはJリーグ参入時などにその名称が変わっている。例えば、アルビレオ新潟がアルビレックス新潟に、大分トリニティが大分トリニータへ、鳥栖フューチャーズはサガン鳥栖になり、ブランメル仙台はベガルタ仙台、福岡ブルックスはアビスパ福岡へと名称を変えてきた。鳥栖は、完全にクラブが変わってしまったという経緯がありながらも、その他のクラブは皆この商標登録の壁にぶつかってきたわけである。まさにその登録商標の数恐るべしといえるだろう。
 
 しかし、熊本の場合は少し「ロッソ」という名称は安易過ぎたかもしれない。ブランメル(英語で伊達男という意味)でさえ登録商標で存在していたというのだから、イタリア語であっても単純に色の名前ではこの壁にぶつかるのも無理はないだろう。クラブの名称はファンへの愛着という点では非常に重要な要素であり、チームグッズなど営業面にも大きく影響してくる。これからJリーグ参入を控え、クラブの全ての面で更なるグレードアップが必要されるタイミングでまだ良かっただろう。そういう意味ではクラブ創立時から応援を続けるサポーターには少し残念なことかも知れないが、商標登録を義務付けるというのはJクラブ運営の命綱となる。

 その点、クラブ名称に基づいた「愛称」というのは非常に便利だ。プレミアリーグに見られるようにアーセナルが「ガナーズ」、リバプールが「レッズ」、トッテナムが「スパーズ」でニューキャッスルが「マグバイズ」など多くのクラブがその愛称で世界的に親しまれている。Jリーグでももっとこういった愛称が定着すればまた面白いのだが。
 先日、アジア王者の輝いた浦和は「レッズ」という愛称がすっかり日本では定着した。正式には「浦和レッドダイヤモンズ」だが、「浦和レッズ」があたかも正式名称のように独り歩きしている。まだJリーグを見渡してもここまで愛称の定着しているクラブは皆無だ。せめてそのクラブの地名で呼ばれるぐらいだろう。

 Jリーグは「チーム名=愛称」の意味合いが強い。かつて開幕時にはそれぞれ親会社など企業名が入った正式なチーム名があったが、(例:ヴェルディ川崎=読売日本サッカークラブ)企業色から脱却を図るJリーグの構想から、現在では全てのチームが正式なチーム名を一般的に認識されている名前としている。初めてイレギュラーなケースとして登場したのが、2000年にJ昇格を果たしたFC東京であった。
 FC東京はJリーグでは初めてチーム名が愛称とイコールにならない欧州スタンダードとも言うべきチーム名であった。通常ではそれぞれのチームに設定されているようなマスコットキャラクターというコンセプトもない。純粋にホームタウンのサッカークラブであることを地で唱えるシンプルな名前である。
 しかしながら、FC東京の愛称を日頃耳にするかと言われれば、そんなことは無い。近年では、横浜FCや愛媛FCなどFC東京を模した形でチーム名を発足させるところも見られてきた。これらのチームはその名前を登録商標とさせる必要もなく、シンプルながら本来のチーム名の在るべき姿を表しているのかもしれない。

 チーム名が変わってしまうのはファンや関係者にとっても心機一転リスタートを図る意味ではいいのかもしれないが、J参入を志すクラブは商標登録の問題を充分視野に入れたチーム名を最初から設定しなければならない。そしてそれ以上に日本のチーム名の極めて愛称に近いネーミングが欧州などと少し路線を分かつように感じるのである。
 今回のロッソ熊本からロアッソ熊本への名称変更はそんな日本サッカーの独自路線を垣間見た印象的なトピックスであった。


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