東京さまよい記

東京をあちこち彷徨う日々を、読書によるこころの彷徨いとともにつづります

伊藤匠七段藤井八冠から叡王奪取

2024年06月21日 | 将棋

伊藤匠七段が第9期叡王戦五番勝負第5局で藤井聡太叡王に勝ち、3勝2敗で将棋タイトルの叡王を奪取し、初タイトルを獲得した(2024年6月20日)。藤井は、タイトル戦で初めて敗退し、八冠から七冠(竜王・名人・王位・王座・棋王・王将・棋聖)に後退した。

今回の叡王戦の五番勝負の結果・戦型は次のとおりで、角換わりシリーズであった。

 第1局 藤井先手○ 角換わり相腰掛け銀
 第2局 伊藤先手○ 角換わり後手3三金型
 第3局 伊藤後手○ 角換わり相腰掛け銀
 第4局 藤井先手○ 角換わり相腰掛け銀
 第5局 伊藤後手○ 角換わり先手腰掛け銀

伊藤は、藤井に11連敗(+1持将棋)し無勝利だったが、第2局で勝ち、藤井に初勝利した。これが自信につながったのか、後手番の第3局を終盤で逆転勝ちし、藤井をカド番に追い込んだ。第4局は先手であったが、穴熊を藤井に上手く攻略され、2勝2敗のタイになった。

第5局の最終局は、先手藤井の積極的な攻めで、銀のただ捨てから空いた6五に桂を打ち、二枚の桂で後手玉に迫り、飛車を切って寄せに出て、おまけに持ち時間も藤井が1時間以上多く残し藤井優勢のように見えたが、後手伊藤に5三銀、5二銀の受けの妙手が出て混戦になった。この手は、ABEMA解説棋士や終局後の藤井も好手と認めていた。その後、藤井が7一の飛車を7六龍と引き守りに利かせ、攻守が入れ替わったが、結局、藤井の最後の攻めが一枚足りず、藤井の投了となった。

この第5局の感想戦で、終盤▲8一馬と飛車を取った後の△7六歩に対し、▲3四金、△4二玉、▲4三歩、△4一玉の変化について深浦九段から意見が出たが、藤井は自信がないとのことだった。この変化は将棋AIも示し、その後▲6六銀とかわした後も同じ手順を示していた。藤井は、▲6六銀の思想がおかしかったと悔やんでいたとのことだったので、その変化にしていたらどうなったのだろうか。ちょっと印象に残った。

今回の叡王戦は、挑戦者伊藤が藤井八冠をタイトル戦で初めてカド番に追い込み、これだけで特筆すべきタイトル戦になったと思っていたが、伊藤の初タイトル獲得・藤井の八冠独占崩壊という将棋界のビッグニュースになった。

藤井のこれまでのタイトル戦での対局相手は、同年代の伊藤(両者ともに2002年生まれ)が過去2回挑戦者となっただけで、それ以外は自身よりも年上であった。藤井は、同年代の伊藤を三度挑戦者に迎え、持ち時間が比較的短く勝手が違ったのだろうか、得意の終盤でミスが出たりしたが、伊藤もかなり終盤が強く、ミスが少ないことがわかった。これからの将棋タイトル戦は、この二人が軸になりそうな予感がするが、はたしてどうなるのか、楽しみである。

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