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春の画

2024-01-07 00:37:11 | 映画
シネスイッチ銀座で「春の画」を見てきました。

春の画…つまりは春画の魅力に迫ったドキュメンタリーです。江戸時代には葛飾北斎、喜多川歌麿、鳥居清長、鈴木春信といった名だたる浮世絵師たちが春画を手がけ、極上の作品を生み出しました。しかし、明治になると、春画はわいせつ物として取り締まりの対象となり、姿を消すことに…。そして、長い時を経て、2015年に永青文庫で日本初の春画展が開催され…私も見に行きました…が、その後、春画を眼にする機会はほとんどなく…。この映画では長く秘されてきた春画の美と神秘の謎に迫ります(以下、ネタバレ気味です)。

この映画では春画の一級品が数多く登場…歌麿の「歌まくら」、鳥居清長の「袖の巻」、鈴木春信の「風流艶色真似ゑもん」、北斎の「喜能会之故真通(蛸と海女)」、歌川国貞の「正写相生源氏」などなど…一生分の春画を見たような気すらしました。しかも無修正&大画面で。春画の復刻プロジェクトも紹介されていて、キワモノかと思われた春画が、実は絵師のみならず彫師・刷師の技術の粋が集約されたものだったことがわかります。とりわけ、陰影表現ならぬ陰毛表現の技術が凄い。作品の一部はアニメーション化されていて、声優さんの迫真の演技も相まってけっこう生々しかったですね。春画と一口にいっても、耽美なもの、笑えるもの、グロいもの、怖い絵、などなど実にバリエーションが豊富。このアイデアはいったいどこから湧いてくるのだろう…と思ってしまいますが、やはり人間存在の根本に関わるテーマなので、創り手の飽くなき探求心をそそるのやもしれません。そんなわけで、エロスとアートの狭間にある春画の魅力をお腹いっぱい堪能…。

ちなみに、この映画は監督もプロデューサーも女性の方です。そして、朝吹真理子さん、春画―ルさん、橋本麻里さん、ヴィヴィアン佐藤さん、横尾忠則氏、会田誠氏、木村了子さんなどが登場し、春画の魅力を語っています。音楽は原摩利彦さん。洗練された雅な感覚がこの映画の世界観にマッチしていました。

映画を見た後、隣のギャラリーアートハウスで開催されていた「銀座の小さな春画展」にも行ってきました(展覧会は既に終了しています)。北斎の海女と蛸の絵も出ていましたよ…たしかに映画を見てから実物を見ると、違って見えてくるような気がしますよね。それにしても、江戸時代から数百年を経た銀座のど真ん中で、人々がひっそりと春画に見入っている図というのもなかなかに乙でした。
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