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オスカー・ピーターソン black+white

2024-04-18 00:43:20 | 映画
ヒューマントラストシネマ渋谷で「オスカー・ピーターソンblack+white」を見てきました(この映画館での上映は既に終了しています)。

ジャズピアノの巨匠、オスカー・ピーターソンのドキュメンタリーです。ジャズピアノの大御所中の大御所の姿をついに映画で見られる日が来たのか…と、いそいそと行ってまいりました。ちなみにオスカー・ピーターソン、来年で生誕100周年なのだそうです(以下、ネタバレします)。

この映画ではオスカー・ピーターソンの生い立ちから亡くなるまでを本人や家族の言葉で追って行きます。彼の音楽の影響を受けたミュージシャンも多数登場…ビリー・ジョエル、クインシー・ジョーンズ、ラムゼイ・ルイス、ハービー・ハンコック…ビリー・ジョエルは「この人は聴かないとダメだ」とまで語っています。

カナダ・モントリオール出身のオスカー・ピーターソンがピアノを始めたのは父親が彼に「ピアノを弾かせると決めていた」からでした。若い頃からテクニシャンだった彼ですが、アート・テイタムを初めて聴いた時は、ショックのあまり2か月ピアノを弾けなくなり、毎晩泣いていたのだとか…テイタムが盲目と知ってとどめを刺されたと言っていましたね。しかし、気を取り直してピアノを再開し、カナダで活躍していた彼に、ジャズの名門レーベル、ヴァーヴの創設者のノーマン・グランツが目をつけます。彼の招きにより、カーネギーホールで華々しくアメリカ・デビュー、その後も順調にキャリアを築きます。とりわけ、ベースのレイ・ブラウン、ギターのハーブ・エリスと組んだトリオが素晴らしいものでした。

世界じゅうで活躍することになるオスカー・ピーターソンですが、彼にも黒人差別は無縁ではありませんでした。彼が差別を受けた時に身を呈してかばったのは白人のノーマン・グランツでした。銃口を突きつけられても一歩もひるまない彼に警官は「黒人よりタチが悪い」と言い残してその場を立ち去ったとか。ノーマン・グランツ、男前です。そして、オスカー・ピーターソンは公民権運動に触発された「自由への賛歌」を作曲しています。一方、ツアー続きの日々に寂しさを感じていたようで、最高の演奏をしてホテルに帰って来ても四方を白い壁に囲まれているだけ…というようなことを、あの巨体をかがめて切なそうに語っていましたね。私生活では3度の離婚、4度目の結婚で幸せになったかと思いきや、68歳の時に脳梗塞で倒れます。後遺症で左手が以前のようには動かなくなっても、奇跡のカムバックを果たしますが、82歳で死去…。

ジャズピアノを学ぶ人ならばおそらく一度は通ると思われるオスカー・ピーターソン。超絶技巧もさることながら、徹底的に陽を貫いたピアノ…聴く者をハッピーにする音楽の底にある強靭なものを見たような思いがしました。あの世でも「起きたらピアノ、寝てもピアノ」な日々を送っているのでしょうか…。
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